被告人は昭和二二年一一月十五日食糧管理法被疑事件について勾留せられ其の勾留期間中同月二七日本件詐欺罪について檢察事務官の取調を受けその際録取された聽取書中の供述記載が原判決の證據として採用されていること所論の通りであるがさればとて右の聽取書を無効とする理由はなく、これを證據として採用したことが違法であるとも言い難い。
勾留中の被告人に對する檢察事務官の聽取書の證據能力
憲法38條2項,刑訴應急措置法10條2項
判旨
被告人が公判廷で供述を翻した場合であっても、以前の供述を証拠として採用することは裁判所の自由裁量に属し、また、公判廷における自白を唯一の証拠として有罪を認定しても憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 被告人が公判廷で前示供述を翻した場合に、以前の供述を証拠として採用できるか。 2. 公判廷における被告人の自白のみをもって有罪を認定することは、憲法38条3項に違反しないか。
規範
1. 証拠の取捨選択及び被告人が異なる供述をした場合にいずれを採用するかは、裁判所の自由裁量(専権)に属する。 2. 被告人の公判廷における自白は、憲法38条3項の「本人の自白」に含まれず、補強証拠がなくともそれのみで有罪認定の証拠とすることが可能である。
重要事実
被告人は昭和21年11月から昭和22年9月までの間、4件の詐欺行為を行ったとして起訴された。被告人は公判廷で以前の供述を翻し、一部の証言が誘導尋問に基づくものであることや、別件(食糧管理法違反)での勾留中に取られた聴取書の不当性を主張して、証拠採用の違法を訴えた。また、公判廷での自白のみによる有罪認定の是非も争われた。
あてはめ
1. 被告人が公判廷で異なる供述をしても、証拠の取捨選択は裁判所の裁量であり、前示供述を証拠採用することに違法はない。 2. 本件では、米の買入れの期限に明確な定めがなくても、再三の催促に対し相当の時期に履行しない事実は詐欺の認定を妨げない。 3. 公判廷における自白については、憲法の自白排除法則・補強法則の対象外とするこれまでの判例に照らし、唯一の証拠として有罪認定の基礎とすることができる。
結論
被告人の公判廷での自白のみによる有罪認定は憲法に違反せず、また、以前の供述を証拠として採用した原判決に採証法則違反の違法はない。
実務上の射程
公判廷自白の補強証拠不要説を維持した判例であり、現在の刑事訴訟法下では、法319条2項が「公判廷における自白であるとないとを問わず」補強証拠を必要としているため、憲法解釈としては維持されているが実務上の結論は修正されている点に注意が必要である。証拠選択の自由裁量については現在の実務でも妥当する。
事件番号: 昭和28(あ)206 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみによって有罪とされることを禁じた憲法38条3項に関し、第一審判決が自白だけでなく複数の証拠を総合して犯罪を認定している場合には、同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が公判廷外で行った自白に基づき有罪判決が下されたとして、弁護人が自白のみによる事実認定は憲法違反であると主張し…
事件番号: 昭和25(あ)560 / 裁判年月日: 昭和26年7月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が証拠とすることに同意し、適法に証拠調べが行われた供述調書は、刑訴法326条に基づき証拠能力が認められる。また、かかる証拠が存在する以上、自白のみを唯一の証拠として有罪とされたものではないため、憲法38条3項には違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、司法警察職員が作成したA外3名の供述調…
事件番号: 昭和23(れ)168 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
公判廷における被告人の自白は憲法第三八條第三項にいわゆる「本人の自白」に含まれない。補足意見齋藤悠輔