記録に徴すれば、被告人には別罪につき所論指摘の裁判が確定して居り、原判決認定の各罪はその裁判確定前に犯されたものであること明らかであるが、原判決は右確定裁判のあることを明らかにしていないけれども、未だ裁判を経ない本件各罪について処断したのは、刑法第四五条後段第五〇条を実際上適用した結果に外ならず、また右各法条の適用は必ずしもこれを判決に示す要はないのであるから、原判決に右各法条の適用を掲げないことは違法とするに足りない。
刑法第四五条後段の併合罪と同第五〇条の適用を判示することの要否
刑法45条後段,刑法50条,旧刑訴法360条1項
判旨
憲法38条3項の「本人の自白」に公判廷における自白は含まれず、補強証拠がなくとも当該自白のみで犯罪事実を認定できる。
問題の所在(論点)
公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項に規定される「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」という補強法則の適用対象となるか。
規範
憲法38条3項にいう「本人の自白」には公判廷における被告人の自白は含まれない。したがって、公判廷での自白が存在する場合には、刑罰を科すための補強証拠を必要とせず、当該自白のみに基づいて有罪判決を下すことが可能である。
重要事実
被告人は別罪の確定判決がある中で、その確定前に犯した複数の罪(本件各罪)について起訴された。原審において被告人は本件各罪の犯罪事実を認める自白を行ったが、原判決は他に補強証拠を挙げることなく、当該公判廷での自白のみを証拠として犯罪事実を認定し、有罪を言い渡した。これに対し弁護側は、自白のみによる認定は憲法38条3項に違反するとして上告した。
あてはめ
憲法38条3項が補強証拠を要求する趣旨は、密室での強制的な自白による誤判や人権侵害を防止することにある。これに対し、公判廷における自白は、公開の法廷において裁判官の面前で、かつ弁護人の援助を受け得る状況下でなされるものである。このような公判廷での自白については、憲法が予定する「本人の自白(外部の強制によるおそれのある自白)」には該当しないと解するのが相当である。本件において、原判決が被告人の原審公判廷における自白のみによって犯罪事実を認定したことは、憲法の規定に抵触するものではない。
結論
公判廷における被告人の自白は憲法38条3項の「本人の自白」に含まれないため、補強証拠なしに自白のみで有罪としても憲法違反ではない。
実務上の射程
本判決は憲法上の解釈を示したものだが、現行の刑事訴訟法319条2項は「公判廷における自白であると否とを問わず」補強証拠が必要であると明文で規定している。そのため、現在の実務・司法試験においては、本判決の憲法解釈を前提としつつも、実務上は刑訴法の規定に従い、公判廷の自白であっても補強証拠が必要となる点に注意して論述する必要がある。
事件番号: 昭和26(あ)4019 / 裁判年月日: 昭和28年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷における自白に加え、他人の供述調書や領置調書が存在する場合、それらを相俟つことで犯罪事実を認定することは、自白のみによる認定に当たらず、憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人Aは食糧管理法違反等の罪に問われた。第一審において被告人は犯行を認める供述(自白)を行っていた…
事件番号: 昭和23(れ)168 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
公判廷における被告人の自白は憲法第三八條第三項にいわゆる「本人の自白」に含まれない。補足意見齋藤悠輔
事件番号: 昭和23(れ)662 / 裁判年月日: 昭和23年11月10日 / 結論: 棄却
一 原審第三回公判調書中、辯論の更新に關する部分には、「被告人」と記載せられて、「被告人等」とも、「被告人兩名」とも記載せられていないことは所論のとおりであるが、「被告人」とは、必ずしも、所論のように、單數の被告人のみを指すとは限らない。 二 當該公判廷における被告人の自白は憲法第三八條第三項、刑訴應急措置法第一〇條第…