判旨
共犯者らが意を通じて被害者を欺罔し、財物を交付させた場合、一方の者が独立に騙取したものでない限り、共謀共同正犯が成立する。
問題の所在(論点)
刑法246条1項の詐欺罪において、共犯者の一方が直接の実行行為(欺罔および交付の受領)を行った場合、他方の者に共同正犯が成立するための要件が問題となる。
規範
二人以上の者が特定の犯罪を行う目的で意思を通じ合い、その共謀に基づき、一部の者が実行行為に及んだ場合には、実行行為を自ら行っていない者であっても、共同正犯(刑法60条)としての責任を負う。
重要事実
被告人Aは、Bと意を通じて、被害者Cを欺罔して登記書類を受け取った。弁護人は、BがAとは独立に当該書類を騙取したものであると主張して上告した。
あてはめ
本件では、証拠によれば被告人AとBが「意を通じて」Cを欺罔したことが明らかである。BがAとは独立に登記書類を騙取したという事実は認められず、両者の間に詐欺罪の実行に向けた意思の疎通とそれに基づく行為が認められる。したがって、AとBの共謀関係が肯定される。
結論
被告人Aに詐欺罪の共同正犯が成立する。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件のうち、特に「意思の連絡(共謀)」の有無が争点となる事案での引用に適している。短文の判決であるが、共犯者が独立して動いたのではなく共同して目的を達したことを重視する実務の基本的な姿勢を示している。
事件番号: 昭和27(あ)2837 / 裁判年月日: 昭和28年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同正犯の成立には共同犯行の認識が必要であるが、実行行為の分担に加え、事後的な盗品等の処分を引き受けるなどの事情があれば、正犯意思に基づく共同実行が認められる。 第1 事案の概要:被告人Bは、他の被告人との間で共同犯行の認識を有しており、さらに本件で窃取等されたと考えられる生地の処分まで引き受けて…
事件番号: 昭和24(れ)2710 / 裁判年月日: 昭和26年9月28日 / 結論: 棄却
数名の者が詐欺罪を行うことを通謀した以上、実行行為に携わらなかつた通謀者において実行者の具体的欺罔行為の内容を逐一認識しなくても、共同正犯としての責任を負う。