判旨
共同正犯の成立には共同犯行の認識が必要であるが、実行行為の分担に加え、事後的な盗品等の処分を引き受けるなどの事情があれば、正犯意思に基づく共同実行が認められる。
問題の所在(論点)
実行行為に直接関与していない、あるいは関与が限定的な者について、共同犯行の認識や事後の処分行為の引受けがある場合に、共同正犯としての罪責を問えるか(刑法60条)。
規範
刑法60条の共同正犯が成立するためには、共同実行の事実(客観的要件)と、自己の犯罪として行う意思(主観的要件としての正犯意思)および共同犯行の認識が必要である。
重要事実
被告人Bは、他の被告人との間で共同犯行の認識を有しており、さらに本件で窃取等されたと考えられる生地の処分まで引き受けていた。弁護人は事実誤認および判例違反を主張して上告した。
あてはめ
本件において被告人Bには、第一審判決が挙示する証拠により共同犯行の認識が認められる。加えて、単なる幇助にとどまらず、本件生地の処分を引き受けている事実は、犯行の遂行に重要な役割を果たし、自己の犯罪として利得を得ようとする正犯意思を裏付けるものである。したがって、共同実行の意思に基づく関与があったと評価できる。
結論
被告人Bには共同正犯が成立する。原判決に判例違反や事実誤認の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
共謀共同正犯や実行後の関与が問題となる事案において、事後の利得処分への関与を「正犯意思」や「本質的寄与」を推認させる重要な間接事実として位置づける際に活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4195 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪における被害者は、財物の所有者のみならず、事実上の保管管理を委ねられている者も含まれる。また、虚偽の誓約証書を提示して財物を交付させた場合、欺罔行為と財物交付との間には因果関係が認められる。 第1 事案の概要:被告人は、ミシン機の月賦販売を行う会社が所有し、事実上Aが保管管理していたミシン機…