判旨
共謀共同正犯が成立するためには、実行行為者との間の共謀の事実が厳格な証明により認定される必要があり、単なる犯行への関与の疑いを超え、客観的事実から共謀を直ちに断定できない場合には、共謀の認定は許されない。
問題の所在(論点)
実行行為に直接関与していない被告人に対し、共謀共同正犯としての罪責を負わせるための「共謀」の認定に際し、不十分な間接事実のみから共謀を断定することが許されるか。
規範
刑法60条の共同正犯が成立するためには、複数人の間に特定の犯罪を行うことについての意思の合致(共謀)が存在することが必要である。共謀の認定にあたっては、被告人と実行行為者との関係、犯行の経緯、実行行為の内容等の客観的事実に基づき、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の証明を要する。
重要事実
被告人Aは、Dと共謀して詐欺を行ったとして起訴された。原審は、(1)Dが過去にAらの共謀にかかる類似犯行に使用されていたこと、(2)Dが金融の内情を察知していたこと、(3)Dが独自の判断で小切手を振り出させる等の欺罔行為を尽くしたこと、という事実に基づき、AとDの共謀を認めた。
あてはめ
本件では、Dが独自の判断で小切手を用いるなどして欺罔行為を行っている事実に照らせば、当該犯行はDの単独犯行であるとの疑いを差し挟む余地がある。原審が挙げた(1)ないし(3)の事実だけでは、直ちにAとDの間に意思の合致があったと断定することは困難である。したがって、これら不十分な事実から共謀を認定した原審には、審理不尽の違法および事実誤認の疑いがあるといえる。
結論
被告人AとDとの共謀を認定し、共謀共同正犯としての罪責を認めた原判決には審理不尽・事実誤認の疑いがあるため、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
共謀共同正犯の成否が争われる事案において、検察官側が立証すべき「共謀」の厳格さを強調する際に用いる。特に、実行行為者の「独自の判断」や「単独犯の可能性」をうかがわせる事実がある場合に、共謀の認定を否定する方向の有力な論拠となる。
事件番号: 昭和29(あ)424 / 裁判年月日: 昭和29年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白のみを証拠として有罪判決を下すことは憲法38条3項により禁じられるが、十分な補強証拠がある場合には有罪判決の維持を妨げない。本件では被告人の供述以外の客観的事実等により補強法則の要件が満たされている。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪の判決を受けたところ、弁護人は原判決が被告人の…
事件番号: 昭和40(あ)1717 / 裁判年月日: 昭和40年2月24日 / 結論: 棄却
共謀共同正犯における共謀の事実は罪となるべき事実であるから、証拠によつてその内容が証明されなければならないが、右共謀の内容が証拠によつて認定できる以上、判決文には単に「共謀の上」と判示しても違法とはいえないことは、当裁判所の判例−昭和二九年(あ)第一〇五六号、同三三年五月二八日大法廷判決、刑集一二巻八号一七一九頁−とす…