共謀共同正犯における共謀の事実は罪となるべき事実であるから、証拠によつてその内容が証明されなければならないが、右共謀の内容が証拠によつて認定できる以上、判決文には単に「共謀の上」と判示しても違法とはいえないことは、当裁判所の判例−昭和二九年(あ)第一〇五六号、同三三年五月二八日大法廷判決、刑集一二巻八号一七一九頁−とするところである。
共謀の判示方法。
刑訴法335条1項,刑法60条
判旨
共謀共同正犯における共謀の事実は証拠によって証明される必要があるが、その内容が証拠により認定できる限り、判決文に単に「共謀の上」と判示しても違法ではない。
問題の所在(論点)
刑法60条の共同正犯において、共謀の内容を判決書にどこまで具体的に記載すべきか。特に、判決文に「共謀の上」と抽象的に記載することが、罪となるべき事実の判示として違法(刑事訴訟法335条1項違反)となるかが問題となる。
規範
共謀共同正犯が成立するためには、共謀の事実が「罪となるべき事実」として証拠によって証明されなければならない。もっとも、その具体的な内容が証拠によって合理的に認定できるのであれば、判決書における判示としては「共謀の上」という簡潔な表現を用いることも許容される。
重要事実
被告人A、B、Cらは共謀共同正犯として起訴され、下級審において有罪判決を受けた。弁護人は、判決文において共謀の内容が具体的に示されず、単に「共謀の上」と判示されていることは、罪となるべき事実の摘示として不十分であり、証拠に基づかない認定であるとして上告した。
事件番号: 昭和44(あ)1332 / 裁判年月日: 昭和45年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において適法な上告理由となるためには、事実誤認や単なる法令違反の主張では足りず、判例違反を主張する場合には当該判例を具体的に示す必要がある。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起した事案において、弁護人は第一点から第三点までの上告趣意を提出した。その内容は、事実誤認の主張、単なる法令違反の主…
あてはめ
本件において、原判決およびその是認する第一審判決が挙げた証拠を精査すると、被告人らの間に共謀の事実があったことを認めるに足りる。共謀の内容がこれらの証拠によって客観的に認定できる以上、判決文において「共謀の上」と一括して判示しても、構成要件に該当する事実の摘示として欠けるところはないと解される。
結論
本件判決に所論の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
共謀共同正犯の成否を論じる答案において、判決書への記載方法という形式面から実体法上の共謀の証明の必要性を確認する際に用いる。実務上、共謀の成立には意思の連絡と正犯意思が必要であるが、判示上は簡潔な表現が許容されることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和35(あ)2824 / 裁判年月日: 昭和38年5月31日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯が成立するためには、実行行為者との間の共謀の事実が厳格な証明により認定される必要があり、単なる犯行への関与の疑いを超え、客観的事実から共謀を直ちに断定できない場合には、共謀の認定は許されない。 第1 事案の概要:被告人Aは、Dと共謀して詐欺を行ったとして起訴された。原審は、(1)Dが過…
事件番号: 昭和26(あ)1977 / 裁判年月日: 昭和26年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の犯罪事実に対し、証拠の標目を一括して挙示しても、判文と記録を照合してどの証拠がどの事実を認定したか明白であれば、証拠挙示に違法はない。 第1 事案の概要:被告人の二個の犯罪事実を認定した第一審判決に対し、被告人が「証拠の標目を各事実ごとに分けることなく一括して挙げている点は、東京高等裁判所の…
事件番号: 昭和41(あ)2908 / 裁判年月日: 昭和42年9月7日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】有印私文書偽造・同行使罪の共謀が認められるためには、単に虚偽内容の文書を作成して資金を借り受ける意思や共謀があるだけでは足りず、特定の他人の名義を冒用して文書を偽造し、これを行使することについての具体的な認識ないし共謀が必要である。 第1 事案の概要:被告人Aは、共犯者BおよびCと、架空の溜池改修…
事件番号: 昭和35(あ)2252 / 裁判年月日: 昭和40年3月16日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】判決の基礎となる重要な証拠を適法に証拠採用せず、その証拠を手がかりにしなければ犯罪事実の証明が十分でない場合に、その認定事実を是認することは、理由の食い違いまたは事実認定に関する証拠法則違背に当たり、著しく正義に反する。 第1 事案の概要:被告人が相被告人Iと共謀して手形割引詐欺等を行ったとして起…