数名の者が詐欺罪を行うことを通謀した以上、実行行為に携わらなかつた通謀者において実行者の具体的欺罔行為の内容を逐一認識しなくても、共同正犯としての責任を負う。
実行者の具体的行為の内容を認識しない通謀者の責任
刑法60条,刑法246条
判旨
共謀共同正犯が成立するためには、共謀者間で共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用して自己の意思を実行に移す関係があれば足り、実行行為を分担しない共謀者が実行者の具体的な欺罔行為の内容を逐一認識していることまでを要しない。
問題の所在(論点)
実行行為を分担していない共謀者が共同正犯としての責任を負うために、実行者が行った具体的な実行行為(本件では欺罔行為)の内容を逐一認識している必要があるか(共謀共同正犯の成立要件)。
規範
共謀者が共同正犯として処罰されるのは、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用して自己の意思を実行に移す点にある。したがって、数名が犯罪を行うことを通謀し、そのうち一部の者が実行行為を遂行した場合には、実行行為に携わらなかった者も、通謀した範囲において実行者と同様の責任を負う。この際、通謀者において実行者の具体的行為の内容を逐一認識している必要はない。
重要事実
被告人AおよびEは、Bらと共謀し、軍衣袴(軍服)の払い下げを希望する者らに対し、政治献金を行えば早急かつ確実に払い下げが受けられるかのように装って金員を騙取しようと計画した。その後、実行担当者であるBが、被害者らに対して具体的な欺罔行為(虚偽の事実の告知)を行い、多額の現金を交付させた。AおよびEは、Bが具体的にどのような言葉で被害者を欺いたか、またその交付の場に同席していたわけではなかったため、具体的な欺罔行為の内容を認識していなかったとして、共同正犯の成立を争った。
あてはめ
本件において、被告人AおよびEは、軍服の払い下げが可能であるかのように装って金員を騙取するという詐欺の犯行をBらと通謀している。この通謀に基づき、Bが具体的な欺罔行為に及んで金員を騙取した事実は証拠により認められる。たとえAらがBの具体的な欺罔行為の内容を知悉していなかったとしても、また詐欺の相手方と面識がなかったり、交付の場に不在であったりしたとしても、前記の通謀が認められる以上、自己の犯罪敢行の意思をBの実行行為を介して実現したものと解される。したがって、AおよびEは詐欺罪の共同正犯としての責任を免れない。
結論
実行者の具体的な行為内容を逐一認識していなくとも、共同意思に基づく実行行為が行われた以上、共謀共同正犯が成立する。被告人らの上告を棄却し、詐欺罪の共同正犯の成立を認めた原判決を維持する。
実務上の射程
共謀共同正犯の成立要件として「具体的行為の認識」が不要であることを明示した重要判例である。実務上、組織的犯罪や分業型の犯罪において、首謀者が細部を把握していない場合でも、犯罪の概括的な計画(通謀)があれば正犯性を認められる根拠として頻用される。
事件番号: 昭和26(れ)2035 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成立において、相被告人の供述や被害届の記載等に基づき、被告人が他の者と意思を通じて犯罪を実行したという共謀の事実が認められれば、共同正犯としての責任を負う。 第1 事案の概要:被告人が、相被告人A及びBと共に、ある犯行を計画・実行したとして起訴された。第一審の公判調書には、相被告人A…
事件番号: 昭和27(あ)6498 / 裁判年月日: 昭和28年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪における欺罔行為は、必ずしも被害者に経済的損失を負わせることのみを目的とするものではなく、被害者が真実を知っていれば金品を交付しなかったであろう重要な事項について偽ることを含む。 第1 事案の概要:被告人らは共謀の上、特定の商品や権利の販売において、その性質や価値について虚偽の事実を告げた。…
事件番号: 昭和27(あ)6146 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯が成立するためには、事前の打合せや意思の連絡が必要であり、これらが認められない場合には単独犯として処理されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は、共犯者が存在する共犯事件であると主張して上告したが、原審(または記録上)では、当該事件において当事者間での事前の打合せ等は認められず、そ…