刑訴応急措置法に基く逮捕状の執行による被疑者逮捕の場合には、同法第八条第四号の規定により同条第三号掲と記の旧刑訴第一二七条及び第一二九条所定の手続を準用し、逮捕状によつて逮捕された被疑者を受け取つた司法警察官又は検察官はその被疑者を尋問することができる。
刑訴応急措置法に基く逮捕状により逮捕された被疑者に対する司法警察官ならびに検察官の尋問権
日本國憲法の施行に伴う刑事訴訟法の應急的措置に関する法律8條,旧刑訴法127條,旧刑訴法129條
判旨
公訴事実の同一性は、基本的事実が同一であれば認められるため、詐欺罪において検察官が指定した被欺罔者と裁判所が認定した被欺罔者が異なっても、審判対象の同一性は失われない。
問題の所在(論点)
検察官が起訴状で指定した「被欺罔者」と異なる人物を裁判所が被欺罔者として認定すること、および検察官が除外した目的物を認定することが、審判の請求を受けない事件を判決した違法(不告不理の原則違反)となるか、すなわち公訴事実の同一性の範囲内か。
規範
裁判所は、公訴提起された事実と認定事実との間に「公訴事実の同一性」が認められる限り、訴因の変更等の手続を経ずとも、証拠に基づき独自に事実を認定することができる。特に一個の詐欺罪において、犯罪の目的物の数量や、欺罔行為の対象となる被欺罔者の認定が検察官の主張と異なっても、基本的事実において同一である限り、裁判所の判決は適法である。
重要事実
被告人は共犯者と共謀し、戦災者等の援護用と偽って衣類等の配給を受け、転売して利益を得ようとした。検察官は、被告人が「復員庁の職員」を欺いて物品を騙取したとして公訴を提起したが、第一審判決は「配給元の商事会社営業部員」を被欺罔者として認定した。また、検察官が公判中に目的物である外套の一部を削除する旨陳述したが、判決ではその一部を含めて有罪と認定した。
あてはめ
詐欺罪における目的物の種類や数量、または誰を欺いたかという点は、犯罪の個数を左右するものではなく、公訴事実の同一性を基礎づける基本的事実(いつ、どこで、誰が、何を騙取したかという枠組み)を揺るがすものではない。本件では、被告人が援護用に名を借りて物品を取得したという犯行の基本的事実において、検察官の主張と裁判所の認定は合致している。したがって、被欺罔者の認定の相違や数量の増減は事実認定の範囲内であり、公訴事実の同一性の範囲内と解される。
結論
被欺罔者の認定が検察官の指定と異なっても、基本的事実において同一である限り公訴事実の同一性は認められ、審判の請求を受けない事件を判決した違法はない。
実務上の射程
訴因変更の要否(刑事訴訟法312条1項)に関する初期の重要判例であり、「基本的事実の同一性」を重視する立場を示す。実務上は、被欺罔者の変更は訴因の重要な修正にあたるため、現代の訴因理論(争点明確化の機能)からは訴因変更手続を要すると解される可能性が高いが、審判対象の限界を画定する基準として現在も参照される。
事件番号: 昭和24(れ)2589 / 裁判年月日: 昭和26年3月15日 / 結論: 棄却
詐欺罪において財物の所有者は、他人なることが明らかであれば必ずしも具体的に何人であるかを判示しなくとも犯罪構成要件に欠けるところはない。原判決においては東京都江東区a町b丁目c番地食糧公団東京都B支所C配給所における係員と表示してあるので、且つ証拠説明によれば被害者がAであることがわかるから、詐欺罪の相手方の表示として…