判旨
供出義務を免れ、かつ還元配給を受ける目的で、保有米の事実を秘匿して虚偽の申告を行い、担当吏員を誤信させた行為には、詐欺罪の犯意が認められる。
問題の所在(論点)
米の供出義務を免れるとともに還元配給を受けるため、保有米の事実を隠匿して虚偽の事実を申告した行為について、詐欺罪の犯意が認められるか。
規範
詐欺罪(刑法246条)の成立には、人を欺いて錯誤に陥らせる「欺罔行為」が必要であり、財産的利益を享受する主観的な目的(犯意)を有して、真実に反する事実を申告し、相手方を誤信させることを要する。
重要事実
被告人は、昭和21年度の収穫米約13石および前年度からの繰越し籾約6石を保有していた。しかし、供出義務の一部を免れ、かつ主食の還元配給を受ける意図で、村役場の吏員に対し、収穫高は12石余りで一部を飯米に充当したため供出割当量の完納は不能であるとの虚偽の申告を行い、右吏員を誤信させた。
あてはめ
被告人は、実際には十分な米を保有していたにもかかわらず、これを「秘し」て、収穫高が不足している旨の虚偽の申告を行っている。この行為は、供出義務の免脱および還元配給という財産上の利益を得る目的で行われており、役場吏員を「誤信」させていることから、相手方の錯誤を利用して不法な利益を得ようとする詐欺の犯意が明白に認められる。
結論
被告人の所為には詐欺罪の犯意が認められ、詐欺罪が成立する。
実務上の射程
行政上の義務免脱や給付申請において、前提となる事実(資産状況等)を偽って担当者を誤信させる行為について、詐欺罪の主観的態様を肯定する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)1199 / 裁判年月日: 昭和26年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人名義の転出証明書を利用して虚偽の世帯同居の届出を行い、食糧配給係員を欺いて主食の交付を受けた場合、名義人の実在性や配給受領権の有無にかかわらず詐欺罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、他人名義の転出証明書を悪用し、当該名義人が実際には同居していないにもかかわらず、ある世帯の同居人であるか…