何年間刑の執行を猶予するか、又は何年間選挙権を停止するかということは、事実審たる裁判所が各犯人毎に法定の範囲内で自由に裁量するところに委ねられているものといわなければならない。懲役四月に処せられた他の被告人には一年間の執行猶予が言い渡されたにもかかわらず、懲役三月に処せられた本件被告人には二年間の執行猶予が言い渡され、そのために後者が前者よりも長い期間選挙権を停止されるという結果を生じたとしても、これを目して憲法一四条に違反するものと言うを得ない。
被告人間の刑の軽重の差異と憲法第一四条
憲法14条,刑訴法381条
判旨
刑の量定や執行猶予期間の決定は裁判所の自由な裁量に委ねられており、他の被告人と比較して執行猶予期間が長く、結果として選挙権停止期間に差異が生じても憲法14条には違反しない。
問題の所在(論点)
裁判所が個別の被告人ごとに異なる執行猶予期間を定める裁量権の行使により、他者との比較において不利益な結果(選挙権停止期間の長期化等)が生じる場合、憲法14条の法の下の平等に違反するか。
規範
刑罰の量定は、犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の情状および犯罪後の情況等を総合考慮し、各犯人ごとに個別具体的に決定されるべきものである。執行猶予の成否やその期間、およびそれに伴う付随的効果(選挙権停止等)も広義の量刑に含まれ、これらは法定の範囲内で事実審裁判所の自由な裁量に委ねられる。したがって、犯情が類似する他者との間で処遇に差異が生じることは当然に予定されており、直ちに法の平等の原則に違反するものではない。
重要事実
被告人は懲役3月の判決を受けたが、同時に2年間の執行猶予を言い渡された。一方で、同じ事件に関与した他の被告人は懲役4月の判決を受けたが、執行猶予期間は1年間であった。被告人は、懲役刑自体は自分の方が軽いにもかかわらず、執行猶予期間が他者より長く設定されたことで、結果として選挙権を停止される期間が他者よりも長期に及ぶことになり、これが憲法14条の平等原則に反すると主張して上告した。
あてはめ
刑事罰は特別予防および一般予防の見地から、各犯人に対し妥当な処理を講ずるものである。本件において、被告人は懲役3月・執行猶予2年、他者は懲役4月・執行猶予1年という判決を受けたが、執行猶予期間の長短は裁判所が被告人の諸事情を審査して決定した裁量の範囲内である。選挙権停止期間の差異は、この適切な裁量行使に伴う付随的な結果にすぎない。犯情の一部が他者と類似していても、全体として重く処罰されることは個別化の要請から導かれる当然の結果である。
結論
本件の量刑および執行猶予期間の決定は、裁判所の適法な裁量権の範囲内であり、憲法14条に違反しない。
実務上の射程
量刑判断における裁判所の広範な裁量を肯定する判例。被告人間での刑の不均衡を理由とする憲法違反の主張に対し、刑事罰の個別化の原則(特別予防・一般予防)を対置して反論する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)1570 / 裁判年月日: 昭和30年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判における量刑が他の犯人と比較して重いとしても、それは犯人の個性や情状に応じた個別的判断の結果であり、憲法14条の法の下の平等に違反しない。また、憲法37条1項の公平な裁判所とは、構成等に偏頗の恐れがないことを指し、個別の事実誤認や不利益な判断を当然に違憲とするものではない。 第1 事案の概…