公職選挙法違反被告事件において、第一審が被告人を懲役一〇月三年間執行猶予追徴金三六五〇〇円に処し、被告人より控訴があつた場合、第二審が第一審判決を破棄し、被告人を懲役六月五年間執行猶予、追徴金同額の言渡をしても、刑が被告人に重く変更されたことにはならない。
刑訴第四〇二条に違反しない事例
刑訴法402条,公職選挙法252条
判旨
不利益変更禁止の原則における刑の軽重の判断は、本刑および執行猶予等の諸条件を総体的に考察すべきであり、本刑を減軽した上で執行猶予期間を延長しても、全体として軽減されたとみるのが相当である。
問題の所在(論点)
控訴審において、主刑(本刑)を減軽しつつ執行猶予期間を延長する判決を言い渡すことが、刑事訴訟法402条の定める不利益変更禁止の原則に違反するか。
規範
刑の軽重は、刑の構成要素を個別に比較するのではなく、総体的に考察して判断すべきである。不利益変更禁止の原則(刑事訴訟法402条)に抵触するか否かは、主刑(本刑)の多寡、執行猶予の有無およびその期間等の諸条件を総合的に比較し、被告人にとって実質的に不利益な変更といえるかという観点から決せられる。
重要事実
第一審判決が被告人に対し、懲役10か月、3年間の執行猶予、および追徴金3万6500円を言い渡した。これに対し、原審(控訴審)は、第一審の刑が重きに失するとして破棄自判し、被告人に対し、懲役6か月、5年間の執行猶予、および同額の追徴金を言い渡した。被告人は、本刑が減軽された一方で執行猶予期間が延長されたことは、不利益変更禁止の原則に違反するとして上告した。
あてはめ
本件において、原判決は第一審が言い渡した懲役10か月を6か月に減じている。執行猶予の期間については3年間から5年間に変更されているが、執行猶予が付されている点に変わりはない。執行猶予の持つ法律的価値判断は高く評価されるべきであるが、本刑を度外視して執行猶予期間のみを比較するのは失当である。主刑が大幅に減軽されている事実と、執行猶予が付与されている現状を総合的に考えれば、第一審の刑より軽減されたと見るのが相当であり、被告人に不利益に変更されたとはいえない。
結論
本刑を減軽し、執行猶予期間を延長することは、総体として刑の軽減にあたり、刑事訴訟法402条に違反しない。
実務上の射程
不利益変更の有無を判断する際の「総体的な比較」の考え方を示す基本判例である。答案上では、本刑の短期化が執行猶予期間の長期化による制約を上回ると評価できる場合に、本判例を引用して合憲・適法と論じる。ただし、執行猶予そのものが取り消された場合や、全く異なる種類の刑が科された場合には、別途慎重な比較が必要となる。
事件番号: 昭和29(あ)2649 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
公職選挙法違反被告事件において、被告人のみが控訴をした場合、第一審が言い渡した追徴額のうち一部を控訴審でこれと同額の現金の没収に変更することは第一審判決を被告人の不利益に変更することにならない。
事件番号: 昭和25(れ)494 / 裁判年月日: 昭和25年8月9日 / 結論: 棄却
一 論旨は地方自治法第七三條が衆議院議員選舉法第一三七條の規定を準用し選舉犯罪者に對し選舉權及び被選舉權を停止する旨の規定は憲法第一五條に違反するものであると主張するものであるが衆議院議員選舉法第一三七條を準用して地方公共團体の議員の選舉權被選舉權について特定の欠格事由を定めている地方自治法第七三條は憲法第一五條第三項…