判旨
強姦の過程で生じた処女膜粘膜剥脱等の軽微な損傷であっても、刑法上の「傷害」に該当し、強姦致傷罪が成立する。
問題の所在(論点)
強姦行為に伴って発生した「処女膜粘膜剥脱」程度の軽微な損傷が、強姦致傷罪(刑法181条、現行の強制性交等致傷罪等に対応)における「傷害」に該当するか。
規範
刑法における「傷害」とは、人の生理的機能に障害を与えることをいい、必ずしも外形的な重傷であることを要しない。強姦致傷罪における「致傷」についても、行為の結果として身体の完全性が害され、あるいは生理的機能に障害が生じたと認められる程度の損傷があれば、これに該当すると解するのが相当である。
重要事実
被告人が被害者に対して強姦行為に及んだ際、その過程で被害者に対し、処女膜粘膜剥脱等の損傷を負わせた。弁護人は、当該損傷は軽微であり、強姦致傷罪における「致傷(傷害)」には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
原審が確定した事実によれば、被害者は強姦行為により処女膜粘膜剥脱等の損傷を負っている。このような損傷は、身体の完全性を侵害し生理的状態に変更を加えるものといえる。したがって、損傷が処女膜の剥脱にとどまるとしても、なお刑法上の傷害概念に含まれると解するのが相当であり、強姦致傷罪の成立を認めた原判断に誤りはない。
結論
処女膜粘膜剥脱等の損傷は「傷害」に該当するため、本件において強姦致傷罪の成立を認めた判断は正当である。
実務上の射程
傷害の定義が「生理的機能の障害」だけでなく「身体の完全性の侵害」も含むことを示唆する。軽微な擦過傷や内出血であっても、強姦致死傷罪(現在の強制性交等致死傷罪等)を構成し得るという実務上の指針となる。もっとも、極めて軽微で自然治癒が即座に見込まれる程度のものについては、可罰的違法性の観点から別途検討の余地がある点に注意が必要である。
事件番号: 昭和45(あ)851 / 裁判年月日: 昭和46年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強姦致傷罪(現在の強制性交等致傷罪)における「傷害」は、刑法204条の傷害と同義であり、軽微な傷であっても人の健康状態を不良に変更するものであればこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人が強姦(現:強制性交等)に際して、被害者に負わせた傷が、強姦致傷罪の「傷害」に該当するかが争われた。弁護側は、…