所論は、弁護人は原審において「本件は単純強姦罪と認むべきであつて、被害者の告訴が取下げられた以上免訴すべきものである」旨公訴権消滅免訴の原由たる主張をしたから、原審はこれに対する判断を示すべきであつたにかかわらずこれを示さなかつた違法があると言うのである。しかしながら、右弁護人の主張は単純強姦罪の事実を前提とするものであるが、原判決は強姦致傷罪の事実を認定判示することによつて、単純強姦罪の事実を否認し、従つてこれを前提とする弁護人の主張全部を否定していることは明白であるから所論は理由がない。
強姦致傷罪の事実を認定した原判決に対して為された、単純強姦罪の事実を前提とする弁護人の主張に対する判断の要否
旧刑訴法360条2項,旧刑訴法410条19号,刑法177条,刑法180条,刑法181条
判旨
強姦によって処女膜裂傷を負わせた場合、その負傷は刑法181条の「傷害」に該当し、強姦致傷罪が成立する。また、同罪は非親告罪であるため、被害者の告訴の取下げにかかわらず、公訴の提起および処断が可能である。
問題の所在(論点)
1. 強姦に伴う処女膜裂傷は、刑法181条の「傷害」に含まれるか。 2. 被害者が強姦致傷罪の対象となる傷害を負っている場合、親告罪(旧刑法下の強姦罪等)の告訴取下げが訴訟条件に影響を及ぼすか。
規範
1. 強姦の手段としての暴行または姦淫そのものによって処女膜を裂傷させた事実は、刑法181条(強姦致傷罪)にいう「傷害」に当たる。 2. 処女が成熟期にあるか13歳未満であるかによって、致傷の成否の判断を区別すべきではない。 3. 強姦致傷罪は非親告罪であり、親告罪(単純強姦罪)の告訴取下げによる影響を受けない。
重要事実
被告人AおよびBは、被害者C(処女)に対し強姦に及び、その際にCの処女膜を裂傷させた。被告人らは、犯行後に逮捕状に基づき逮捕され、司法警察官等による訊問を受けた。被害者はその後告訴を取り下げたが、原審は強姦致傷罪の成立を認め、被告人らを処断した。これに対し弁護人は、処女膜裂傷は傷害に当たらないこと、および告訴取下げにより免訴すべきであることを主張して上告した。
あてはめ
1. 被害者の供述によれば、強姦された際に陰部から二度にわたり出血しており、客観的に生理的機能を害する処女膜裂傷が生じているといえる。これは刑法の予定する「傷害」の概念に包含される(当時の判例の維持)。 2. 処女膜裂傷を伴う強姦致傷罪が成立する場合、同罪は親告罪ではない。したがって、弁護人が主張する「単純強姦罪を前提とした告訴取下げによる公訴権消滅」という主張は、強姦致傷罪の事実が認定される以上、前提を欠くものとして否定される。
結論
強姦により処女膜裂傷を生じさせた場合は強姦致傷罪が成立し、同罪は非親告罪であるから、告訴の取下げがあっても処断することができる。
実務上の射程
強姦・強制性交等の罪において、致傷の結果(処女膜裂傷等)が認められる場合に、それが親告罪(現行法では非親告罪化されているが、当時の文脈)の枠を超えて重罪を構成することを確認する射程を持つ。また、逮捕・勾留中の被疑者訊問調書の証拠能力を肯定する手続面での実務にも資する。
事件番号: 昭和24(れ)1505 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 破棄自判
一 しかし旧労働組合法第一条第二項の規定は同条第一項の目的違反のためにした正当な行為についてのみ刑法第三五条の適用を認めたに過ぎず勤労者の団体交渉においても刑法所定の暴行罪又は脅迫罪にあたる行為が行われた場合にまでその適用があることを定めたものでないことは当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三一九号、同二四年五月一八日大…