判旨
強姦致傷罪(現在の強制性交等致傷罪)における「傷害」は、刑法204条の傷害と同義であり、軽微な傷であっても人の健康状態を不良に変更するものであればこれに該当する。
問題の所在(論点)
強姦致傷罪(現:強制性交等致傷罪、刑法181条)における「傷害」の意義は、刑法204条の傷害罪における「傷害」と区別して、より重い生理的機能の損傷に限定して解釈すべきか。
規範
刑法204条の傷害罪における「傷害」とは、人の生理的機能に障害を与えること、すなわち人の健康状態を不良に変更することをいう。加重結果罪である強姦致傷罪(現:強制性交等致傷罪)における「傷害」についても、基本犯である傷害罪の「傷害」と別異に解すべき事由はなく、同様の基準により判断される。
重要事実
被告人が強姦(現:強制性交等)に際して、被害者に負わせた傷が、強姦致傷罪の「傷害」に該当するかが争われた。弁護側は、当該傷が極めて軽微であることを理由に、致傷罪の成立を否定する趣旨の主張を行ったが、第一審および控訴審は致傷罪の成立を認めたため、被告人が上告した。
あてはめ
判決文によれば、人の健康状態を不良に変更するものであれば、それが「軽微な傷」であったとしても刑法上の傷害に該当すると解される。強姦致傷罪において、通常の傷害罪の定義と異なる独自の「傷害」概念を認める必要性は認められない。したがって、被害者の身体に加えられた損傷が生理的機能への影響を伴うものである限り、その程度が軽いことをもって直ちに「傷害」を否定することはできない。
結論
強姦致傷罪(現:強制性交等致傷罪)における傷害は、刑法204条の傷害と同義である。したがって、軽微な傷であっても、人の健康状態を不良に変更するものは同罪の傷害に該当する。
実務上の射程
強姦致傷罪のみならず、強盗致傷罪等の他の結果的加重犯における「傷害」の解釈にも共通して適用される射程を持つ。答案上は、被害者が負った怪我が軽微(例:擦過傷、内出血等)であっても、生理的機能に障害が生じたといえる事実を指摘すれば、本判例を根拠に致傷罪の成立を肯定できる。
事件番号: 昭和24(れ)2055 / 裁判年月日: 昭和24年12月10日 / 結論: 棄却
所論は原判決の傷は極めて輕微の傷で身体傷害とはいえないというのであるが、輕微な傷でも人の健康状態に不良の變更を加えたものである以上、刑法にいわゆる傷害と認むべきであるから、原判決が原判示の傷を傷害と認め被告人の所爲をもつて刑法第一八一條に問擬したのは正常で論旨は理由がない。