軽微な傷でも、人の健康状態に不良な変更を加えたものである以上、刑法所定のいわゆる傷害に該当するものであつて、同法第一八一条所定の傷害を同法第二〇四条所定の傷害と別異に解釈すべき特段の事由は存しないこと、当裁判所の判例(昭和三四年(あ)第一六八六号同三七年八月二一日第三小法廷決定参照)の趣旨に徴し、明らかである。
刑法第一八一条所定の傷害と同法第二〇四条所定の傷害の差異。
刑法181条,刑法204条,刑法177条前段
判旨
刑法181条(強盗致死傷罪)の「傷害」は、204条(傷害罪)の傷害と別異に解釈すべき特段の事由はなく、軽微な傷であっても、人の健康状態に不良の変更を加えたものであればこれに該当する。
問題の所在(論点)
強盗致死傷罪(刑法181条)における「傷害」の意義、および通常の傷害罪(204条)との差異の有無が問題となる。
規範
刑法における「傷害」とは、人の生理的機能を毀損すること、すなわち、人の健康状態に不良の変更を加えることをいう。そして、強盗致死傷罪(181条)における傷害の意義も、通常の傷害罪(204条)と別異に解釈すべき特段の事由はなく、同様に解すべきである。
重要事実
被告人が強盗の際、被害者に対して傷を負わせた事案において、その傷が軽微なものであったことから、強盗致傷罪の成立が否定されるべきではないかという点が争われた(具体的な傷の部位や程度については、判決文からは不明)。
あてはめ
軽微な傷であっても、それが人の健康状態に不良の変更を加えたものである以上、生理的機能の毀損が認められる。本件において原判決が認定した傷が「人の健康状態に不良の変更」をもたらしたものである限り、181条所定の傷害に該当するといえる。刑法204条の傷害概念と区別して、強盗致傷罪においてより重い程度の傷を要求する根拠は存しない。
結論
軽微な傷であっても、人の健康状態に不良の変更を加えたものである以上、強盗致傷罪の「傷害」に該当する。
実務上の射程
強盗致死傷罪が結果的加重犯であり、かつ法定刑が極めて重いことから、かつては軽微な傷を除外する見解もあったが、本判例はその区別を否定した。答案上、傷害概念を「生理的機能の毀損(健康状態の不良な変更)」と定義し、強盗致傷の場面でもこれを貫徹してあてはめる際の根拠となる。可罰的違法性などの観点から事実認定が争われる可能性はあるが、規範としては一貫した解釈を用いるべきである。
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軽微な傷でも、人の健康状態に不良の変更を加えたものである以上、刑法にいわゆる傷害と認めるべきことは、当裁判所の判例(昭和三四年(あ)第一六八六号同三七年八月二一日第三小法廷決定、裁判集一四四号一三頁)の示すところであるから、原判決が原判示の傷(全治五日間を要する顔面口唇部打撲症、腹部打撲症)を傷害と認め、被告人らの所為…