軽微な傷でも、人の健康状態に不良の変更を加えたものである以上、刑法にいわゆる傷害と認めるべきことは、当裁判所の判例(昭和三四年(あ)第一六八六号同三七年八月二一日第三小法廷決定、裁判集一四四号一三頁)の示すところであるから、原判決が原判示の傷(全治五日間を要する顔面口唇部打撲症、腹部打撲症)を傷害と認め、被告人らの所為をもつて刑法二四〇条前段に問擬したのは正当である。
強盗致傷罪における傷害の程度
刑法240条前段
判旨
人の健康状態に不良の変更を加えたものであれば、たとえ軽微な傷であっても刑法上の「傷害」に該当する。
問題の所在(論点)
強盗致傷罪(刑法240条)における「傷害」の意義、および軽微な傷が同条の傷害に含まれるか。
規範
刑法上の「傷害」とは、人の生理的機能を毀損することを指す。具体的には、人の健康状態に不良の変更を加えたものであれば、その程度が軽微な傷であったとしても傷害と認めるべきである。
重要事実
被告人らは、強盗の際、被害者に対して傷を負わせた。その傷は軽微なものであったが、原審はこれを刑法上の傷害にあたると判断し、強盗致傷罪(刑法240条前段)を適用した。これに対し、被告人側が傷の軽微さを理由に傷害の成立を否定して上告した。
あてはめ
本件における被害者の傷は軽微なものではあるが、人の健康状態に不良の変更を加えたものと認められる。生理的機能を毀損している以上、傷害の概念に含まれると解すべきである。したがって、被告人らの行為は強盗致傷罪の構成要件を充足する。
結論
軽微な傷であっても、人の健康状態に不良の変更を加えたものである以上、刑法240条前段の傷害に該当する。
実務上の射程
強盗致傷罪のみならず、傷害罪(204条)全般における「傷害」の定義として機能する。司法試験においては、加害行為により生じた結果が生理的機能を害したといえるかを判断する際の基準として用いる。極めて軽微な擦過傷等であっても、生理的機能の毀損があれば傷害に含まれることを示す基本的な判例である。
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上告趣意一の強盜行爲(原判決判示第一の事實)は未遂であることは原判決もそのとおりに認定しているのであるが、その現場において傷人した以上は、たとい強盜行爲は未遂であつても、刑法第二四〇條前段の強盜傷人罪は成立するのである。