原判決が原判示の傷を傷害と認め、被告人らの所為をもつて刑法240条前段に問擬したのは正当である。 (原判決の要旨) 被告人AはBの首を後から右手でしめつけ、相被告人Cは前からBの顔部下部及び腹部を手拳で数回殴りつけ、右暴行によりBに対し治療約三日を要する頸部絞扼傷及び口内創等の傷害を負わせたものであつて、なるほど頸部絞扼傷については外見上発赤、鬱血、皮下出血等の症状が認められなかつたことは所論のとおりであるが、咽喉部に疼痛を感じ且腫脹したので四、五日間氷で冷し又口内創は口唇前部が一センチメートル位の長さに切れて出血し、右出血は医師の手当によつて止つたが、その後四、五日間痛みを感じたことを認めることができるのであつて、右の事実に徴すると、右被害者に加えた傷は軽微ではあるが、同人の健康状態に不良な変更を加えたものであることはいなめないところであるから、原判決は原判示の傷を傷害と認め、被告人等の行為を刑法第二四〇条の強盗傷人罪に問擬したのは正当である。
刑法第二四〇条前段のいわゆる傷害にあたるとされた事例
刑法240条前段
判旨
刑法上の「傷害」とは、人の健康状態に不良の変更を加えることをいい、たとえ軽微な傷であってもこれに該当する。したがって、強盗の際に軽微な傷を負わせた場合でも、強盗致傷罪(刑法240条前段)が成立する。
問題の所在(論点)
強盗致傷罪(刑法240条前段)における「傷害」の意義。具体的には、被害者が負った傷が軽微である場合に、同罪の成立が認められるか。
規範
刑法にいう「傷害」とは、人の生理的機能を害すること、すなわち健康状態に不良の変更を加えることを指す。その程度については、必ずしも重篤なものであることを要せず、軽微な傷であっても人の生理的機能に影響を及ぼす以上、傷害にあたる。
重要事実
被告人らは共謀の上、強盗に及んだが、その際、被害者に対して傷を負わせた。弁護人は、当該傷が極めて軽微であることを理由に、刑法240条前段(強盗致傷罪)の「傷害」には該当しないと主張して、憲法31条違反や法令違反を訴え上告した。
事件番号: 昭和41(あ)1224 / 裁判年月日: 昭和41年9月14日 / 結論: 棄却
軽微な傷でも、人の健康状態に不良の変更を加えたものである以上、刑法にいわゆる傷害と認めるべきことは、当裁判所の判例(昭和三四年(あ)第一六八六号同三七年八月二一日第三小法廷決定、裁判集一四四号一三頁)の示すところであるから、原判決が原判示の傷(全治五日間を要する顔面口唇部打撲症、腹部打撲症)を傷害と認め、被告人らの所為…
あてはめ
本件において、被害者が負った傷は軽微なものであったが、それは人の健康状態に不良の変更を加えたものと認められる。判例の解釈によれば、生理的機能の侵害がある限り、傷の軽重は傷害の成否自体を左右しない。したがって、原判決が本件の傷を傷害と認め、被告人らの所為を強盗致傷罪として問擬した判断は正当である。
結論
軽微な傷であっても刑法上の傷害に該当するため、強盗致傷罪が成立する。
実務上の射程
強盗致傷罪の成否を検討する際、生理的機能の侵害(出血、めまい、失神、擦過傷等)がわずかであっても、傷害の結果を認めるべきとする実務上の基準となる。答案上では、傷害の定義(生理的機能の毀損)を明示した上で、事実関係から軽微であっても健康状態への影響があることを指摘し、240条の適用を認める流れで活用する。
事件番号: 昭和39(あ)806 / 裁判年月日: 昭和39年9月15日 / 結論: 棄却
一 原審が、第一審の認定した事実関係の下において、被告人の所為を強盗致傷の罪に当るとした判断は正当である。 二 (原審の判断の要旨) 三 所論は、本件傷害は強盗の手段たる暴行行為に包含せらるべきもので、強盗未遂をもつて論ずべきものであるというのであるが、第一審判示右傷害は被告人から暴行を受けた際に生じるものであること、…