一 原審が、第一審の認定した事実関係の下において、被告人の所為を強盗致傷の罪に当るとした判断は正当である。 二 (原審の判断の要旨) 三 所論は、本件傷害は強盗の手段たる暴行行為に包含せらるべきもので、強盗未遂をもつて論ずべきものであるというのであるが、第一審判示右傷害は被告人から暴行を受けた際に生じるものであること、右傷害のうち両手関節部擦過傷は被害者が受傷後出血しているものを認めて痛みを覚え、また下口唇の傷は第三者から知らされるので気ずき、即日医師の手当を受けに行き、両手関節部擦過傷の部分に薬を塗り、繃帯をしてもらい、下口唇にも薬をつけてもらい、その後は自宅で右各受傷部分に二、三日間薬をつけていたが、特に右手関節部擦過傷は長さ約三糎、幅約〇、五糎のものであり、右両手関節部擦過傷は受傷後一〇日を経てもまだ傷跡が残つていたこと、下口唇血腫は者を食べる時痛みを感じ、約一週間で治つたこと、また両大腿部打撲傷は医師の手当を受けに行つた際には気ずかず、翌日から痛み出し、見ると左大腿部打撲傷は長径約五・六糎短径約三・四糎に亘り内出血のため青紫色に腫れており、右大腿部打撲傷の内出血はもつと小さかつたが、一週間痛みを覚え、受傷後九日を経てようやく打ち身の跡が消えたことが明らかであるから、右各受傷は刑法上強盗致傷罪を構成するに足る傷害である。
被告人の所為が強盗致傷の罪にあたるとされた事例。
刑法240条前段,刑法236条
判旨
強盗の機会に人を負傷させた場合、強盗致傷罪(刑法240条前段)が成立する。
問題の所在(論点)
強盗犯人が強盗の手段以外の暴行等によって人を負傷させた場合に、強盗致傷罪(刑法240条前段)が成立するか。
規範
強盗の機会に人を負傷させた場合には、強盗致傷罪(刑法240条前段)が成立し、当該行為が強盗の手段として行われたものであるか否かを問わない。
重要事実
事件番号: 昭和45(あ)1404 / 裁判年月日: 昭和45年12月22日 / 結論: 棄却
夜間人通りの少ない場所で、通行中の女性の所持しているハンドバツクを窃取する目的をもつて、自動車を運転して同女に近づき、自動車の窓からハンドバツクのさげ紐をつかんで引つぱつたが、同女がこれを奪われまいとして離さなかつたため、さらに奪取の目的を達成しようとして、右さげ紐をつかんだまま自動車を進行させ、同女を引きずつて路上に…
被告人が強盗を犯した際、その機会に人を負傷させるに至った。第一審および原審は、これらの事実関係に基づき、被告人の行為を強盗致傷罪に当たると判断した(詳細な具体的態様は本判決文からは不明)。
あてはめ
原審が認定した事実関係によれば、被告人の所為は強盗の機会に行われた負傷行為であると認められる。したがって、当該行為を強盗致傷罪と断じた原審の判断は正当である。弁護人が主張する事実誤認や量刑不当の点は、適法な上告理由に当たらない。
結論
被告人の所為を強盗致傷罪とした原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
強盗致傷罪(240条)における「強盗が人を負傷させた」との要件に関し、暴行・脅迫が強盗の手段(236条)である必要はなく、強盗の機会に行われれば足りるという「機会説」を裏付ける。答案上は、強盗行為と負傷の間に密接な時間的・場所的関連性があることを指摘して本罪の成立を認める際の根拠となる。
事件番号: 昭和34(あ)1686 / 裁判年月日: 昭和37年8月21日 / 結論: 棄却
原判決が原判示の傷を傷害と認め、被告人らの所為をもつて刑法240条前段に問擬したのは正当である。 (原判決の要旨) 被告人AはBの首を後から右手でしめつけ、相被告人Cは前からBの顔部下部及び腹部を手拳で数回殴りつけ、右暴行によりBに対し治療約三日を要する頸部絞扼傷及び口内創等の傷害を負わせたものであつて、なるほど頸部絞…
事件番号: 昭和41(あ)1224 / 裁判年月日: 昭和41年9月14日 / 結論: 棄却
軽微な傷でも、人の健康状態に不良の変更を加えたものである以上、刑法にいわゆる傷害と認めるべきことは、当裁判所の判例(昭和三四年(あ)第一六八六号同三七年八月二一日第三小法廷決定、裁判集一四四号一三頁)の示すところであるから、原判決が原判示の傷(全治五日間を要する顔面口唇部打撲症、腹部打撲症)を傷害と認め、被告人らの所為…
事件番号: 昭和31(あ)3767 / 裁判年月日: 昭和34年6月12日 / 結論: 棄却
某工場で窃盗した者が、現場から一〇メートル位距つた同工場塀外の路上で、折柄警戒中の巡査に発見せられ、現行犯人として追跡を受け、約六〇メートル進んだ地点で逮捕されようとしたので、これを免れるため、手拳で右巡査の胸部を突くなどの暴行を加え、格闘したが、程なく抵抗を止め、同巡査からシヤツの襟をつかまれて附近の前記工場守衛詰所…