夜間人通りの少ない場所で、通行中の女性の所持しているハンドバツクを窃取する目的をもつて、自動車を運転して同女に近づき、自動車の窓からハンドバツクのさげ紐をつかんで引つぱつたが、同女がこれを奪われまいとして離さなかつたため、さらに奪取の目的を達成しようとして、右さげ紐をつかんだまま自動車を進行させ、同女を引きずつて路上に転倒させたり、車体に接触させたり、あるいは道路脇の電柱に衝突させたりして、傷害を負わせたときは、強盗致傷罪が成立する。
強盗致傷罪が成立するとされた事例
刑法240条前段
判旨
強盗の機会に、強盗の実行行為以外の行為によって負傷させた場合であっても、強盗の機会に行われたものである以上、強盗致傷罪が成立する。
問題の所在(論点)
強盗の実行行為以外の付随的行為によって負傷が生じた場合において、刑法240条の強盗致傷罪が成立するか(強盗致傷罪の範囲)。
規範
刑法240条(強盗致傷罪)における「強盗が、人を負傷させたとき」とは、強盗の実行行為そのものによって負傷させた場合に限られない。強盗の機会に行われた行為、すなわち強盗行為と密接に関連し、その機会に生じた負傷であれば同罪が成立する。
重要事実
被告人が行った複数の犯行(第一審判決判示第四、第八、第十五の各行為)について、強盗の際に被害者を負傷させた事実が認められた。弁護側は、これらの行為が強盗致傷罪の構成要件に該当しない(あるいは法令適用に誤りがある)旨を主張して上告した。
あてはめ
原判決の確定した事実関係によれば、被告人の各行為は強盗の機会に行われたものと認められる。強盗の実行行為そのものによる負傷であるか、あるいは強盗に伴う密接な関連行為による負傷であるかにかかわらず、強盗の機会に負傷の結果を生じさせた以上、強盗致傷罪の成立を認めた原判断は正当である。被告人の主張は単なる法令違反や事実誤認の主張にすぎず、特段の事情(刑訴法411条適用事由)も認められない。
結論
被告人の各行為について強盗致傷罪の成立を認めた原判断を正当とし、上告を棄却する。
実務上の射程
強盗致傷罪における「強盗の機会」の概念を認める重要な判断である。答案上では、強盗の実行行為(暴行・脅迫)との密接関連性を検討する際の規範として活用できる。本判決自体は極めて簡潔な決定であるが、後の判例法理における「機会」説を支える基礎的な実務的判断を示すものといえる。
事件番号: 昭和41(あ)1224 / 裁判年月日: 昭和41年9月14日 / 結論: 棄却
軽微な傷でも、人の健康状態に不良の変更を加えたものである以上、刑法にいわゆる傷害と認めるべきことは、当裁判所の判例(昭和三四年(あ)第一六八六号同三七年八月二一日第三小法廷決定、裁判集一四四号一三頁)の示すところであるから、原判決が原判示の傷(全治五日間を要する顔面口唇部打撲症、腹部打撲症)を傷害と認め、被告人らの所為…