甲乙相図り夜間路上で丙に対し顔面を殴打し踏みつける等の暴行を加えているうち、強盗を決意した甲が丙の腕時計を強奪したところ、これを目撃した乙もこれに応じ、ここに甲乙共謀の上、更に丙に対し手あるいは木片等で顔、頭等を殴打し、「金を出せ」と申し向ける等の暴行脅迫を加え、同人から現金を強奪し、前示暴行により丙をして顔面打撲症を負わしめ、なお逃げる同人を追いかけ、同人をして同所から七〇米位離れた民家にガラス戸を割つて飛び込ましめ、その際ガラスの破片で右手背に挫傷を負わしめたときは、甲乙は共謀による強盗傷人の一罪として処断すべきである。
共謀による強盗傷人の一罪として処断すべき事例
刑法240条前段,刑法60条
判旨
強盗の機会に行われた暴行により生じた傷害や、被害者が逃走中に負った負傷は、強盗傷人罪の傷害に該当する。また、複数の財物の奪取は包括して一個の強盗罪を構成する。
問題の所在(論点)
1. 複数の財物奪取および前後する暴行が一個の強盗罪を構成するか。2. 強盗の機会に被害者が自ら逃げ込んだ際に負った負傷(挫傷)が、強盗傷人罪の「傷害」に当たるか。3. 暴行・脅迫の程度が強盗罪の構成要件を満たすか。
規範
1. 強盗傷人罪(刑法240条)における「傷害」は、強盗の機会に行われた暴行によって生じた場合はもちろん、被害者が強盗の暴行から逃れる際に負った負傷であっても、強盗行為と密接な関連がある限り含まれる。2. 一連の強盗の機会に複数の財物を奪取した場合は、包括的に観察して一個の強盗罪を構成する。3. 強盗罪における暴行・脅迫は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要する。
重要事実
被告人が被害者から腕時計を奪取し、さらに現金を奪取した一連の行為において、被害者が打撲傷および挫傷を負った事案。打撲傷については、腕時計奪取前の暴行によるものかその後の暴行によるものかが争点となり、挫傷については、被害者が民家に逃げ込んだ際に負ったものであった。また、被告人の行為が「反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫」に該当するか、および恐喝罪にとどまるのではないかが争われた。
あてはめ
1. 腕時計および現金の奪取は、時間的・場所的連続性や犯意の単一性から包括的に観察して一個の強盗と認められる。2. 打撲傷については、それが腕時計奪取の前後のいずれの暴行に起因するかを問わず、強盗の際に行われた以上、強盗傷人罪の結果に含まれる。3. 挫傷についても、強盗から逃れるために民家に逃げ込んだ際のものであれば、強盗行為に付随して生じたものとして同罪の傷害に当たると解される。4. 本件の暴行・脅迫は、客観的に見て相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであったと認められ、恐喝罪ではなく強盗罪が成立する。
結論
強盗傷人罪が成立する。複数の財物奪取は包括して一個の罪となり、逃走中の負傷も強盗傷人罪の傷害に含まれる。
実務上の射程
強盗傷人罪における傷害の範囲を広く認める判例である。被害者の過失や自傷的な行動が介在した場合でも、強盗の機会との因果関係が肯定される限り同罪が成立する点、および強盗の実行行為の「包括一罪」的捉え方を確認する際に有用である。
事件番号: 昭和34(あ)1686 / 裁判年月日: 昭和37年8月21日 / 結論: 棄却
原判決が原判示の傷を傷害と認め、被告人らの所為をもつて刑法240条前段に問擬したのは正当である。 (原判決の要旨) 被告人AはBの首を後から右手でしめつけ、相被告人Cは前からBの顔部下部及び腹部を手拳で数回殴りつけ、右暴行によりBに対し治療約三日を要する頸部絞扼傷及び口内創等の傷害を負わせたものであつて、なるほど頸部絞…