強盗犯人が被害者にナイフを突きつけ、「お前は高利貸をしているそうだが、これだぞ」等と申し向けつつ被害者の頸や頤のあたりにナイフを突き出す所為は、それ自体人の身体に対する不法の有形力を行使したものとして暴行にあたり、その結果傷害を生じたときは強盗致傷罪を構成する
強盗傷人罪の成立する一事例
刑法240条前段
判旨
強盗の際、被害者の反抗を抑圧するための脅迫として行われたナイフの突き出し行為が、身体に対する不法な有形力の行使に当たるときは、これによって傷害を負わせた以上、刑法240条の強盗傷人罪が成立する。
問題の所在(論点)
強盗が脅迫の手段としてナイフを突き出す行為により被害者に傷害を負わせた場合、強盗傷人罪(刑法240条)を適用することができるか。脅迫行為に付随して生じた傷害の結果に対する同条の適用の可否が問題となる。
規範
強盗の手段として行われる暴行・脅迫において、人の身体に対する不法な有形力の行使を伴う行為(暴行)がなされ、それによって傷害の結果を生ぜしめた場合には、強盗傷人罪(刑法240条)が成立する。強盗の機会に生じた結果であれば、当初の殺傷意図の有無にかかわらず同条が適用される。
重要事実
被告人らは、午前2時30分頃、強盗目的で被害者宅に侵入した。被害者に対し、ナイフを突きつけて脅迫し、その反抗を抑圧して金員を強奪しようとしたが、抵抗にあい未遂に終わった。その際、被告人らが「これでもか」と言いながら2、3回ナイフを突き出したところ、刃が被害者の頸や頤(おとがい)に触れてかすり、それぞれ長さ約6センチメートルの擦過傷を負わせた。
あてはめ
被告人らが被害者の頸部付近にナイフを突き出した行為は、それ自体が人の身体に対する不法な有形力を行使したものとして「暴行」にあたるといえる。本件では、この暴行によって被害者に擦過傷という傷害の結果を生ぜしめている。したがって、強盗の機会において暴行を加え、よって傷害の結果を招いたものと解されるため、強盗傷人罪の構成要件を充足する。
結論
被告人らの所為につき刑法240条(強盗傷人罪)を適用した原判決は正当である。
実務上の射程
強盗致死傷罪における「暴行」は、強盗の手段である暴行のみならず、本件のような脅迫行為に付随する有形力の行使も含まれることを示す。答案上、脅迫の一環として行われた行為が身体に接触して負傷させた場合でも、傷害罪の結果的加重犯として同条を適用する根拠となる。
事件番号: 昭和32(あ)825 / 裁判年月日: 昭和32年10月18日 / 結論: 棄却
甲乙相図り夜間路上で丙に対し顔面を殴打し踏みつける等の暴行を加えているうち、強盗を決意した甲が丙の腕時計を強奪したところ、これを目撃した乙もこれに応じ、ここに甲乙共謀の上、更に丙に対し手あるいは木片等で顔、頭等を殴打し、「金を出せ」と申し向ける等の暴行脅迫を加え、同人から現金を強奪し、前示暴行により丙をして顔面打撲症を…