一 被害者に対し「金を出せ、騒ぐと突き刺すぞ」等と申し向けて刃渡四五糎の日本刀を突きつける所為は、人の身体に対する不法な有形力の行使であつて、強盗傷人罪における暴行にあたる。 二 右の場合、被害者が右日本刀にしがみついて救を求め、犯人がその刀を引いたことによつて右手掌等に傷害を負わしめたときは、その所為は暴行の結果といい得る。 三 共同被告人であつても弁論分離後証人としてした供述は、完全な証拠能力を有する。
一 強盗傷人罪における暴行と認められる一事例 二 傷害が暴行の結果と認められる一事例 三 共同被告人が弁論分離後証人としてした供述の証拠能力
刑法236条1項,刑法240条,刑訴法317条,刑訴法319条2項
判旨
強盗の際に日本刀を突き付ける行為は、それ自体が人の身体に対する不法な有形力の行使として暴行に該当し、被害者が刀にしがみつき犯人が刀を引いたことで負傷した場合、当該暴行による傷害が認められる。
問題の所在(論点)
強盗の際、直接切りつける意思がなく日本刀を突き付けて脅迫したに留まる場合に、被害者の抵抗等によって生じた負傷について強盗致傷罪が成立するか。すなわち、突き付ける行為が「暴行」に該当し、負傷との因果関係が認められるかが問題となる。
規範
強盗致傷罪(刑法240条前段)における「暴行」は、人の身体に対する不法な有形力の行使を指し、凶器を突き付ける行為もこれに含まれる。また、当該暴行の結果として傷害が発生したと認められる場合には、直接的な加撃行為がなくとも同罪が成立する。
重要事実
被告人は共犯者Aと強盗を共謀し、見張り役を務めた。Aは被害者Bに対し、日本刀(刃渡45センチメートル)を突き付けて「金を出せ」「騒ぐと突き刺すぞ」などと脅迫したが、Bが大声をあげて刀にしがみついたため、Aが刀を引いた際、切先などでBの右手掌及び左眼瞼に全治2週間の切創を負わせた。
あてはめ
まず、日本刀を被害者に突き付ける行為は、それ自体が人の身体に対する不法な有形力の行使であり、強盗の手段たる「暴行」に該当する。本件において、被害者が突き付けられた刀にしがみつき、犯人がそれを引いたことで負傷したという一連の経緯は、当初の暴行(突き付け)から生じた結果であると評価できる。したがって、本件は単なる脅迫の事案ではなく、暴行により傷害を加えたものと認められる。
結論
強盗が日本刀を突き付ける暴行を行い、その過程で被害者が負傷した以上、強盗致傷罪が成立する。
実務上の射程
強盗致傷罪における暴行の概念と因果関係の広がりを示す。犯人に直接的な加傷の確定的殺意や加害意思がなくとも、強盗の手段としての暴行(脅迫的提示を含む)から負傷が生じれば致傷の結果を認める実務上の指針となる。また、共謀共同正犯において、実行行為者が行った暴行から生じた結果について、見張り役も責任を負うことを前提としている。
事件番号: 昭和32(あ)648 / 裁判年月日: 昭和33年4月17日 / 結論: 棄却
強盗犯人が被害者にナイフを突きつけ、「お前は高利貸をしているそうだが、これだぞ」等と申し向けつつ被害者の頸や頤のあたりにナイフを突き出す所為は、それ自体人の身体に対する不法の有形力を行使したものとして暴行にあたり、その結果傷害を生じたときは強盗致傷罪を構成する
事件番号: 昭和23(れ)1497 / 裁判年月日: 昭和24年3月1日 / 結論: 棄却
一 強盜傷人罪は財物強取の手段としてなされた暴行に基いて傷害を與えた場合でなくとも、強盜の機會において傷害を與えれば足るのである。 二 強盗傷人罪は所謂結果犯であつて、傷害に對する故意又は過失の有無にかかわらず、常に結果に對して責を負はなければならない。 三 強盜行爲が未遂であつても強盜傷人罪の成立をさまたげるものでは…