判旨
強姦(強制性交等)致傷罪における「傷害」には、治療に約10日間を要する左膝上部等の擦過傷も含まれ、軽微な擦り傷であっても同罪の成立を妨げない。
問題の所在(論点)
強姦(強制性交等)致傷罪における「傷害」の意義。特に、治療期間10日程度の擦過傷が、加重処罰を伴う致傷罪の「傷害」に該当するか。
規範
刑法における「傷害」とは、生理的機能の障害または健康状態の不良化を意味する。致傷を伴う加重結果犯において、当該傷害が軽微な擦過傷等の程度であっても、その事実をもって直ちに致傷罪の成立が否定されるものではない。
重要事実
被告人が被害者に対し、強姦(強制性交等)に及ぶ際、被害者の「左膝上部等に治療約十日間を要する擦過等の傷害」を負わせた。弁護人は、このような軽微な擦り傷程度のものは、強姦致傷罪(現在の強制性交等致傷罪等)の予定する「傷害」には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
本件で被害者が負った怪我は、左膝上部等の擦過傷であり、その治療には約10日間を要するものである。これは被害者の身体の完全性を害し、生理的機能に影響を与えるものであると解される。弁護人は、致傷罪が重罰を規定していることから軽微な傷を除外すべき旨を強調するが、治療に10日を要する程度の擦過傷が生じている以上、法的な意味での傷害事実に変わりはない。したがって、これを強姦致傷罪として認定することに何ら妨げはないと判断される。
結論
治療に約10日間を要する程度の擦過傷は、強姦致傷罪の「傷害」に該当し、同罪が成立する。
実務上の射程
強姦致傷等の結果的加重犯において、傷害の程度に限定を加えず、生理的機能の障害があれば広く致傷罪の成立を認める実務を裏付ける。司法試験においても、傷害の定義(生理的機能障害説)を前提に、臨床上の軽微性を問わず致傷罪の成立を肯定する際の論拠となる。
事件番号: 昭和45(あ)851 / 裁判年月日: 昭和46年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強姦致傷罪(現在の強制性交等致傷罪)における「傷害」は、刑法204条の傷害と同義であり、軽微な傷であっても人の健康状態を不良に変更するものであればこれに該当する。 第1 事案の概要:被告人が強姦(現:強制性交等)に際して、被害者に負わせた傷が、強姦致傷罪の「傷害」に該当するかが争われた。弁護側は、…