たばこ専売法により、犯罪にかかる製造たばこを没収することができないために、その価額を追徴する場合、その没収することができない事由は罪となるべき事実ではないから、必ずしも公判廷で証拠調を経た証拠により認定することも、判決にその証拠説明をすることも、これを要しないものである。
たばこ専売法違反の犯罪に係る製造たばこ没収不能のためその価額を追徴する場合、没収不能の事由の認定と証拠調の要否
たばこ専売法75条,刑法19条ノ2,刑訴法317条,刑訴法335条
判旨
追徴の前提となる「没収することができないこと」という事由は、罪となるべき事実ではないため、厳格な証明や判決への証拠説明を要しない。
問題の所在(論点)
没収に代わる追徴を命じる際、その前提となる「没収することができない」という事由の認定に、厳格な証明(刑訴法上の適法な証拠調べ)が必要か、また判決に証拠説明を要するか。
規範
没収・追徴の対象となる物件が「没収することができないこと」という事由は、刑罰の権限を基礎づける構成要件に該当する事実(罪となるべき事実)ではない。したがって、その認定には必ずしも公判廷において適法な証拠調べを経た証拠(厳格な証明)を要せず、また、判決においてその証拠説明をすることも要しない。
重要事実
被告人は、たばこ専売法違反にあたる外国製製造たばこの譲受・譲渡行為を行った。第一審判決は、譲渡されたたばこが譲受行為に係る物件であると認定し、当該物件を没収できないためにその価額を追徴した。これに対し弁護人は、没収不能の事由が適法な証拠調べを経て認定されていない旨、憲法違反および訴訟法違反を主張して上告した。
あてはめ
本件における追徴の対象となった外国製製造たばこは、既に他に譲渡されており、物理的に没収不可能な状態にあった。この「没収することができない」という状況は、被告人の犯罪行為そのものを構成する「罪となるべき事実」ではない。そのため、自由な証明等によって認定することが許容され、判決文中にその証拠の出所や具体的説明を記述しなかったとしても、適正な手続を定めた刑訴法の規定に違反するものではないと解される。
結論
追徴の前提となる没収不能の事由は、厳格な証明や判決への証拠説明を要しない。したがって、原判決の認定手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
追徴の要件認定において、対象物の存在や価額の認定などは証拠に基づく必要があるが、本判例によれば「没収不能」という事態の認定については厳格な証明を要しない事実(付随的事実)として扱われる。答案上は、没収・追徴の法的性質や、構成要件的事実とそれ以外の事実の区別の文脈で活用できる。
事件番号: 昭和36(あ)2568 / 裁判年月日: 昭和37年10月4日 / 結論: 棄却
所論は、本件没収、追徴は、被告人の犯罪に籍口して、国が財政収入の二重取りをするものであるから、憲法所論法条に違反するというのである。しかし、本件没収は、たばこ専売法違反行為の取締りを励行する為に、被告人に対し、附加刑として科せられたものであり、本件追徴は右没収に代るべきものとして被告人からなされたものであつて、たばこ専…