一、指定小売人から売り渡された「製造たばこ」であつても、公社または指定小売人でない者が、他にこれを販売したときは、たばこ専売法第二九条第二項に違反する。 二、同法第七五条第二項にいわゆるその価額の追徴は、現実の取引の価額の如何にかかわらず、その物件の客観的に適正な価額の追徴を意味し、当該物件が日本専売公社によつて定価の公示された製造たばこであるときは、その価額により、公示された定価のないものであるときは、客観的に適正と認められる価額によるのを相当とする。
一、たばこ専売法第二九条第二項に違反するとされた事例 二、同法第七五条第二項の追徴価額
たばこ専売法29条2項,たばこ専売法71条5号,たばこ専売法75条
判旨
たばこ専売法に基づく没収・追徴は、不正な物件の流通禁止と専売制度による財政収入の確保を目的とした必要的な規定である。その追徴額の算定基準となる「価額」とは、現実の取引価格ではなく客観的に適正な価格を指し、公示された定価がある場合はその定価によるべきである。
問題の所在(論点)
たばこ専売法75条に基づく必要追徴において、算定の基準となる「価額」をどのように解釈すべきか。また、同条の趣旨は何か。
規範
たばこ専売法75条2項にいう「その価額の追徴」とは、犯行時における現実の取引価格の如何にかかわらず、当該物件の「客観的に適正な価額」を意味する。具体的には、日本専売公社によって定価が公示されている製造たばこについては、その公示された定価をもって追徴額の基準とすべきである。
重要事実
被告人は、日本専売公社または指定小売人でないにもかかわらず、反覆継続して製造たばこを他者に販売する行為を行った(たばこ専売法29条2項違反)。一審判決は、当該犯行に係る物件について必要追徴を命じたが、被告人側はその価額の算定および追徴・没収の適用について、憲法違反および法律の解釈適用の誤りを主張して上告した。
あてはめ
同法75条は、犯則物件等が犯人の手元に存することを禁止するとともに、国が専売を独占し財政収入を確保するために、不正なたばこ販売の取締りを励行する趣旨である。追徴は没収の不能に代わる手続であるから、その額は犯人が得た利益ではなく、物件の客観的価値を基準とすべきである。本件の対象は日本専売公社により定価が公示された製造たばこであるため、客観的に適正な価額として、その定価による算定が正当化される。
結論
追徴額は現実の取引価格ではなく、公示された定価に基づき算定されるべきである。本件上告は棄却される。
実務上の射程
行政取締法規における必要没収・追徴の趣旨と「価額」の解釈を示す。刑法19条の2の追徴が「利得の剥奪」を主眼とするのに対し、本判例のような特別法における必要追徴は「客観的な物件価値の剥奪」による取締りの実効性確保に重点があることを理解し、答案では対象法規の目的に即して使い分ける。
事件番号: 昭和27(あ)1525 / 裁判年月日: 昭和28年8月25日 / 結論: 棄却
一 製造たばこの価額を追徴するにあたり、たばこ専売法第七五条第二項を適用している以上、その製造たばこが同項にいう「没収することのできないとき」であると判断した趣旨に解すべきである。 二 判決で追徴を言い渡す場合、必ずしも特に、没収することができなかつた具体的理由および追徴金額算出の基礎を、証拠を掲げて説明するを要しない…