一 たばこ専売法第七五条第二項により同条項にいう「価額」を追徴するに当つては、犯則者たる被告人各自からそれぞれの犯則物件に代るべき価額を追徴すべきであつて、所論のように、被告人両名から右価額を追徴しこれを分担せしむべきものと解すべきではない。 二 同法第七五条第一項所定の物件を他に譲り渡したときは、その譲受人から右物件を没収する場合においても、その譲渡人からは、右物件の価額を追徴しなければならないこと、当裁判所の判例とするところである(昭和三一年(あ)第一一六一号同三三年四月一七日第一小法廷決定、集一二巻六号一〇五八頁参照)。
一 たばこ専売法第七五条第二項にいう価額の追徴 二 同法第七五条第一項所定の物件を他に譲り渡した場合その譲渡人に対し右物件の価額を追徴することの適否
たばこ専売法75条,たばこ専売法66条1項
判旨
たばこ専売法に基づく追徴は、犯則物件の保有を禁止し国家財政を確保する趣旨の行政罰的性格を有する。したがって、共犯者の場合には分担させるのではなく、各自から物件の価額全額を追徴すべきである。
問題の所在(論点)
たばこ専売法75条2項に基づく追徴において、複数の犯則者が存在する場合、その価額を分担させるべきか、あるいは各犯則者に対して全額を追徴すべきか。
規範
犯則物件の没収・追徴(たばこ専売法75条)は、不法な物件が犯則者の手に存することを禁止するとともに、国家の専売権を保護し財政収入を確保するという取締上の要請に基づく。この趣旨に照らせば、複数の犯則者が関与した場合には、各犯則者からそれぞれ犯則物件に代わるべき価額の全額を追徴すべきであり、共犯者間で価額を分担(分割)して追徴することは許されない。
重要事実
被告人AおよびBは、たばこ専売法違反の罪(不正たばこの販売等)に問われた。原審は、両被告人に対して犯則物件の価額についてそれぞれ全額を追徴するとの判断を下した。これに対し被告人側は、追徴金は被告人両名で分担(分割)されるべきである、あるいは一方が没収・追徴を受ける場合は他方から重ねて徴収すべきではないと主張して上告した。
あてはめ
同法75条の規定は、単なる不当利得の剥奪にとどまらず、不正たばこの流通を厳重に取締り、専売制度を維持するという行政目的を有している。この目的を達成するためには、犯則に関与した各主体に対して、犯則物件を保有しているのと同等の経済的制裁を課す必要がある。したがって、共犯者が共同して犯行に及んだ場合であっても、各自が独立した犯則者として、物件の価額全額を納付すべき義務を負うと解するのが法の趣旨に合致する。また、物件が第三者に譲渡され、当該譲受人から物件が没収される場合であっても、譲渡人(犯則者)からは別途その価額を追徴する必要がある。
結論
被告人各自からそれぞれ犯則物件に代わるべき価額の全額を追徴すべきであり、分担させるべきではない。本件各上告を棄却する。
実務上の射程
行政刑法における必要的な没収・追徴の性質が、利得の剥奪のみならず「取締の厳励」という制裁的・行政目的的な側面を有する場合に、共犯者全員に対して全額の追徴を認める「個別追徴(重複追徴)」の原則を示す。現在の薬物犯罪や関税法違反等の事案においても、同様の論理構成で個別追徴を正当化する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和35(あ)2624 / 裁判年月日: 昭和38年9月18日 / 結論: 棄却
たばこ専売法第七五条第一項所定のたばこを、甲乙丙丁と順次譲り渡し(売買)たときは、甲乙丙の各譲渡にかかるたばこの個数と価額に応ずる各金額を、譲渡人である甲乙丙から各別に追徴すべきである。