たばこ専売法第七五条第一項所定のたばこを、甲乙丙丁と順次譲り渡し(売買)たときは、甲乙丙の各譲渡にかかるたばこの個数と価額に応ずる各金額を、譲渡人である甲乙丙から各別に追徴すべきである。
たばこ専売法第七五条第一項所定のたばこを他に順次譲り渡した場合、その各譲渡人からそのたばこの価額を追徴することの適否。
たばこ専売法75条1項,たばこ専売法75条2項
判旨
数人が順次物件を転売した場合、各譲渡人が物件を他に譲り渡した事実が認められる以上、各被告人からその個数と価額に応じた金額を各別に追徴すべきである。
問題の所在(論点)
禁制品等の物件が複数の者の間で順次転売された場合において、各譲渡人に対して個別に価額の全額を追徴することが、二重処罰や不当な財産権侵害(憲法29条違反等)にあたらないか、またその追徴の範囲が問題となる。
規範
没収し得ない物件を他に譲り渡した際の追徴については、譲受人から当該物件を没収し得る場合であっても、譲渡人からその価額を追徴しなければならない。また、物件が数人の間で順次転売された場合には、各譲渡行為を捉えて、それぞれの譲渡人から各別に追徴をなすべきものとする。
重要事実
被告人A、B、Cの3名は、たばこ専売法75条1項に該当するたばこを順次転売した。原審は、被告人らが当該物件を他に譲渡した事実を認定した上で、各被告人が譲渡したたばこの個数および価額に応じた金額を、各被告人からそれぞれ各別に追徴する旨の判断を示した。
あてはめ
本件では、被告人3名の間でたばこが順次転売されており、各被告人がそれぞれ独立した譲渡行為を行っている。たばこ専売法75条の趣旨に照らせば、物件を他に譲り渡した以上は、その譲渡人から価額を追徴すべきである。したがって、譲受人から物件を没収できるか否かに関わらず、また他の譲渡人が追徴を受けるか否かに関わらず、各被告人の譲渡事実に基づき、各別に追徴を課すことは正当であると解される。
結論
たばこを順次転売した各被告人に対し、それぞれの譲渡個数と価額に応じた金額を各別に追徴すべきとした原判決は相当である。
実務上の射程
共犯者間での没収・追徴の範囲に関する判断であり、特に「順次転売」がなされた場合に、各加担者の利得の有無に関わらず、譲渡事実をもって各別に全額追徴が可能であることを示す。実務上は、共犯者全員から重複して追徴する「個別追徴」の原則を裏付ける判例として機能する。
事件番号: 昭和31(あ)1161 / 裁判年月日: 昭和33年4月17日 / 結論: 棄却
一 たばこ専売法第七五条第二項に規定する追徴すべき「価額」とは、その物件の客観的に適正な価額を意味する。 二 同法第七五条第一項所定の物件を他に譲り渡したときは、その譲渡人から右物件を没収する場合においても、その譲渡人からは、右物件の価額を追徴しなければならない。