たばこ専売法第七五条第二項にいわゆるその価額の追徴とは、現実の取引違反の価額の如何にかかわらず、その物件の客観的に適正な価額の追徴を意味し、当該物件が日本専売公社によつて定価の公示された製造たばこ(輸入製造たばこを含む)にあたると認められるものについては、その価格により、公示された定価のないものについては、客観的に適正と認められる価額によるとするのを相当とする。
たばこ専売法第七五条第二項の追徴価額
たばこ専売法75条,たばこ専売法71条1号,たばこ専売法66条1項
判旨
たばこ専売法75条2項の「価額」とは、現実の取引価格ではなく、物件の客観的に適正な価額を意味する。公示価格がある場合はその価格により、ない場合は客観的に適正と認められる時価によるべきである。
問題の所在(論点)
たばこ専売法75条2項(現行の罰則規定における没収不能時の追徴規定に相当)にいう「その価額」とは、実際の密売価格を指すのか、それとも公定価格等の客観的な適正価格を指すのか。
規範
たばこ専売法75条2項の「その価額」の追徴とは、現実の取引違反の価額にかかわらず、その物件の客観的に適正な価額の追徴を意味する。具体的には、日本専売公社により定価が公示された製造たばこについては当該公示価格により、公示価格がないものについては客観的に適正と認められる価額(犯行時の時価・相場)によると解するのが相当である。
重要事実
被告人AおよびBは、輸入製造たばこ「ラッキー・ストライク」を不法に所持した。被告人Aについては、公示価格が1箱130円と定められた後の不法所持であり、原判決は同単価で追徴金を算出した。被告人Bについては、公示前の不法所持分(250個)につき1箱80円、公示後の不法所持分につき1箱130円として追徴金を算出した。被告人らは、この「価額」の算定方法を不服として上告した。
あてはめ
同法の必要没収・必要追徴規定の趣旨は、犯則物件を犯則者の手元に残さないことで専売制度を独占し、国家の財政収入を確保することにある。したがって、追徴すべき「価額」は個別の密売価格に左右されるべきではない。本件において、公示価格がある期間については1箱130円を客観的価格と認め、公示がない期間については証拠に基づき適正と認められる1箱80円を時価として算出した原審の判断は、この客観的適正価額の算定として妥当である。
結論
たばこ専売法75条2項の「価額」を、公示価格または客観的に適正な時価とした原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
行政刑罰における必要追徴の価額算定基準を示した判例である。違法な取引価格そのものではなく、公定価格や客観的な市場価格(時価)を基準にすべきという考え方は、専売制以外の行政取締法規における追徴金の算定においても、制度の趣旨(不当な利得の剥奪や公法的独占の保護)に照らして射程が及ぶ。
事件番号: 昭和27(あ)1525 / 裁判年月日: 昭和28年8月25日 / 結論: 棄却
一 製造たばこの価額を追徴するにあたり、たばこ専売法第七五条第二項を適用している以上、その製造たばこが同項にいう「没収することのできないとき」であると判断した趣旨に解すべきである。 二 判決で追徴を言い渡す場合、必ずしも特に、没収することができなかつた具体的理由および追徴金額算出の基礎を、証拠を掲げて説明するを要しない…
事件番号: 昭和34(あ)2198 / 裁判年月日: 昭和35年3月31日 / 結論: 棄却
日本専売公社の売り渡さない製造たばこを譲り受けた場合には、たとい、右たばこを入手するため代金を支払つたとしても、譲受人から右代金を控除することなく、違反にかかる製造たばこの価額を追徴すべきである。