日本専売公社の売り渡さない製造たばこを譲り受けた場合には、たとい、右たばこを入手するため代金を支払つたとしても、譲受人から右代金を控除することなく、違反にかかる製造たばこの価額を追徴すべきである。
犯則物件を譲り受けた場合とたばこ専売法第七五条第二項の追徴。
たばこ専売法66条1項,たばこ専売法71条1号,たばこ専売法75条
判旨
たばこ専売法75条2項に基づく追徴は、単に不正利益の剥奪を目的とするだけでなく、犯則物件等が犯人の手元にあることを禁止する趣旨を含む。したがって、盗品と知りつつ製造たばこを譲り受けた者が支払った代金を、追徴額から控除することはできない。
問題の所在(論点)
たばこ専売法75条2項に基づき、没収不能な物件の価額を追徴する場合、譲受人がその入手のために支払った代金額を、追徴すべき「価額」から控除すべきか。
規範
たばこ専売法75条が犯則物件等の没収・追徴を規定する趣旨は、国の財政収入の確保という目的のため、不正たばこの流通を厳に取締り、犯則物件またはこれに代わるべき価額が犯人の手元に存することを禁止する点にある。したがって、同条2項の追徴は、単なる不正利益の剥奪にとどまらず、物件の価額そのものを徴収する性質を有する。
重要事実
被告人は、日本専売公社が売り渡したものではない製造たばこについて、それが盗品であることを知りながら譲り受けた。被告人はその際、対価として代金を支払っていた。その後、当該たばこの大部分を他者に転売し、一部を自ら消費したため、物件を没収することが不能となった。原審は、被告人が支払った購入代金を控除することなく、当該たばこの価額全額の追徴を命じたため、被告人側がこれを不服として上告した。
あてはめ
本件において、被告人は盗賍品であると知りながら不正に製造たばこを入手しており、法の禁止する犯則物件の保持を行っている。前述の通り、同条の趣旨は物件またはその価額が犯人の手元にあること自体を禁ずる点にある。そうであれば、譲受に際して代金を支出していたとしても、それは犯人側の主観的な事情にすぎず、没収・追徴の対象となる物件自体の客観的価値に影響を与えるものではない。したがって、支払代金を差し引くことなく、たばこの客観的価額(ピース1個40円等)に基づき追徴額を算定すべきである。
結論
追徴額の算定にあたり、支払済みの代金を控除する必要はない。原判決が代金を控除せずに追徴を命じた判断は正当である。
実務上の射程
行政刑法における没収・追徴の性質(剥奪的性質か制裁的・取締的性質か)が問題となる場面で活用できる。特に行政上の取締目的が強い法規においては、実質的な利得の有無にかかわらず、物件の客観的価値全額が追徴対象となることを示す指針となる。
事件番号: 昭和37(あ)410 / 裁判年月日: 昭和37年9月13日 / 結論: 棄却
一、指定小売人から売り渡された「製造たばこ」であつても、公社または指定小売人でない者が、他にこれを販売したときは、たばこ専売法第二九条第二項に違反する。 二、同法第七五条第二項にいわゆるその価額の追徴は、現実の取引の価額の如何にかかわらず、その物件の客観的に適正な価額の追徴を意味し、当該物件が日本専売公社によつて定価の…