一 製造たばこの価額を追徴するにあたり、たばこ専売法第七五条第二項を適用している以上、その製造たばこが同項にいう「没収することのできないとき」であると判断した趣旨に解すべきである。 二 判決で追徴を言い渡す場合、必ずしも特に、没収することができなかつた具体的理由および追徴金額算出の基礎を、証拠を掲げて説明するを要しない。 三 刑法第一九条第一項、第一九条ノ二の規定とたばこ専売法第七五条の規定とは、一般法と特別法の関係にある。
一 たばこ専売法第七五条第二項の適用と「没収することのできないとき」の判断 二 追徴と没収することができなかつた具体的理由および追徴金額算出の基礎の各証拠説示の要否 三 刑法第一九条第一項第一九条ノ二とたばこ専売法第七五条との関係
刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑法8条,刑法19条1項,刑法19条ノ2,たばこ専売法75条1項,たばこ専売法75条2項
判旨
追徴の言渡しにおいて「没収することができないこと」や「追徴額の算出基礎」は刑事訴訟法335条1項の「罪となるべき事実」に当たらないため、判決書に証拠を挙げて詳細に説示する必要はない。
問題の所在(論点)
追徴を言い渡すに際し、没収不能の理由や追徴額の算出基礎となる事実について、刑事訴訟法335条1項の「罪となるべき事実」として証拠を挙げて詳細に説示する必要があるか。
規範
没収不能による追徴の言渡しは、没収・追徴の根拠条文(本件ではたばこ専売法75条2項)の適用を示すことで足りる。追徴の要件となる「没収することができないとき」の判断や、追徴金額算出の具体的基礎となる事項は、刑法上の構成要件に該当する「罪となるべき事実」(刑事訴訟法335条1項)には含まれない。したがって、判決においてこれらを個別に証拠を挙げて判示し、詳細に説明することを要しない。
重要事実
被告人がたばこ専売法違反の罪に問われた事案において、第一審判決は同法75条2項を適用して追徴を言い渡した。これに対し弁護人は、(1)没収することができない理由を明示していない点、(2)追徴金額の算出基礎を証拠を挙げて判示していない点、(3)追徴に関する刑法の規定の適用を示していない点が法令違反であると主張して上告した。
あてはめ
第一審判決がたばこ専売法75条2項(特別法)を適用して追徴を言い渡したことは、論理的に「没収することができない」と判断したことを包含しており、別途没収不能の理由を明示する必要はない。また、追徴額の算出基礎は罪となるべき事実そのものではないため、刑訴法335条1項の要請は及ばない。原判決(控訴審)において記録に基づき計算の正当性が確認されている以上、第一審が証拠を挙げて計算過程を詳述しなかったとしても違法とはいえない。さらに、特別法に追徴の規定がある場合はその適条を示せば足り、一般法である刑法の規定を併せて示す必要もない。
結論
追徴の理由や算出基礎の判示が不十分であるとの主張は理由がなく、上告を棄却する。
実務上の射程
追徴の言渡しに関する判決書の記載程度について示した判例である。実務上、追徴額の算定過程自体は審理の対象となるが、判決書における理由記載としては、根拠条文の提示があれば「罪となるべき事実」ほどの厳密な証拠との対応関係や説示は求められないという射程を持つ。
事件番号: 昭和28(あ)3800 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
たばこ専売法により、犯罪にかかる製造たばこを没収することができないために、その価額を追徴する場合、その没収することができない事由は罪となるべき事実ではないから、必ずしも公判廷で証拠調を経た証拠により認定することも、判決にその証拠説明をすることも、これを要しないものである。