判旨
たばこ専売法75条1項の必要的没収は、物件が存在し特定可能な限り、押収の有無を問わず言い渡すべきであり、追徴は同条2項所定の「没収することができないとき」等の要件を満たす場合に限り許される。物件が還付された事実のみをもって直ちに追徴を選択することは許されず、物件の存在や特定可能性を審理せずに追徴を認めた原判決には法令解釈の誤りがある。
問題の所在(論点)
たばこ専売法75条における必要的没収と追徴の適用関係、特に「一度押収された物件が還付された」という事実関係において、物件の現存性等を調査せずに追徴を言い渡すことの可否が問題となる。
規範
1. たばこ専売法75条1項は、犯罪に係る物件が存在し、かつ特定しうるものであれば、他人の所有に属する場合や他人に譲渡された場合を除き、押収の有無を問わず、必ず没収の言渡しをしなければならない(必要的没収)。 2. 同条2項に基づく追徴は、物件を他に譲り渡し、若しくは消費したとき、又は他に所有者があって没収することができないときに限り、その価額について言い渡すことができる(補完的性質)。
重要事実
被告人は、製造たばこ(ピース、いこい等)の販売準備行為により、たばこ専売法違反に問われた。当該たばこは一度押収されたが、その後被告人の請求により還付されていた。第一審判決は、この物件について没収ではなく追徴の言渡しを行い、原判決(控訴審)もこれを是認した。しかし、記録上、還付後のたばこが現存し特定可能か否か、あるいは追徴の要件事実(譲渡や消費の有無等)については何ら取り調べが行われていなかった。
あてはめ
本件では、犯罪に係る製造たばこが被告人に還付されているが、還付後もその物件が存在し特定しうる状態にあるならば、同条1項により没収を言い渡すべきである。しかるに、原審は物件の現存・特定可能性や、同条2項の追徴要件(譲渡・消費の有無等)について何ら事実を確定していない。物件が手元にあるにもかかわらず、単に押収状態にないからといって安易に追徴を選択することは、必要的没収を定めた同条の解釈適用を誤るものである。
結論
追徴の言渡しを是認した原判決には、審理不尽および法解釈の誤りがあるため破棄を免れない。したがって、原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
特別法における「必要的没収・追徴」の適用順位を示す重要な指針である。答案上は、没収と追徴が選択関係にあるのではなく、まずは没収の可否(物件の現存・特定・帰属)を検討し、それが不能な場合に初めて追徴が検討されるという「追徴の補充性」を論理構成に組み込むべきである。本判例は、還付された物件であっても現存する限りは没収すべきであることを明示しており、実務上の事実認定の在り方を規律している。
事件番号: 昭和37(あ)410 / 裁判年月日: 昭和37年9月13日 / 結論: 棄却
一、指定小売人から売り渡された「製造たばこ」であつても、公社または指定小売人でない者が、他にこれを販売したときは、たばこ専売法第二九条第二項に違反する。 二、同法第七五条第二項にいわゆるその価額の追徴は、現実の取引の価額の如何にかかわらず、その物件の客観的に適正な価額の追徴を意味し、当該物件が日本専売公社によつて定価の…