昭和三〇年五月頃から同年一一月初頃までの間に製造たばこ合計約二一万本を密造した所為と、昭和三〇年一一月一日頃から同三一年一月三〇日頃までの間一一回にわたり右密造にかかる製造たばこのうち合計約一一万三千六百本を譲渡した所為および昭和三一年二月八日右密造にかかる製造たばこのうち九千本を所持した所為とは、吸収包括または牽連関係にならない。
製造たばこの密造とその譲渡および所持が吸収、包括または牽連関係にならない一事例
たばこ専売法27条,たばこ専売法66条1項,刑法45条,刑法54条1項
判旨
製造たばこの密造、譲渡し、および不法所持の各行為は、互いに吸収関係や牽連関係(刑法54条1項後段)には立たず、併合罪(同法45条前段)となる。
問題の所在(論点)
製造たばこの「密造行為」、「譲渡行為」、および「不法所持行為」の罪数関係がいかなるものか、特に吸収関係や牽連関係(刑法54条1項後段)の成否が問題となる。
規範
一連の犯行であっても、各行為が独立した犯罪構成要件を充足し、かつ手段と結果の関係にあるといえない場合には、吸収関係や牽連関係を認めず、別罪として併合罪の関係に立つ。
重要事実
被告人は、製造たばこを密造し(第一事実)、その密造したたばこを各譲り渡し(第二事実)、さらに密造たばこを不法に所持した(第三事実)。弁護人は、これらの行為が吸収包括されるか、あるいは牽連関係にあると主張して上告した。
あてはめ
密造行為は製造段階で完結する罪であり、その後の譲渡や所持は別個の意思決定に基づく行為といえる。これらは犯罪の性質上、当然に一方が他方に含まれる吸収関係にはなく、また密造が譲渡や所持の「手段」であるという密接な関係(牽連関係)も認められない。したがって、各事実は独立した犯罪として成立すると解される。
結論
被告人の密造、譲渡し、および不法所持の各所為は、吸収包括または牽連関係にならず、併合罪となる。
実務上の射程
専売法違反(現行のたばこ事業法等に関連)等の行政刑罰における罪数判断の基準を示す。密造・譲渡・所持という一連の流れがあっても、各態様が別個に規定されている場合は、原則として併合罪として処理すべきとする実務慣行を支持するものである。
事件番号: 昭和35(あ)2624 / 裁判年月日: 昭和38年9月18日 / 結論: 棄却
たばこ専売法第七五条第一項所定のたばこを、甲乙丙丁と順次譲り渡し(売買)たときは、甲乙丙の各譲渡にかかるたばこの個数と価額に応ずる各金額を、譲渡人である甲乙丙から各別に追徴すべきである。