所論は、本件没収、追徴は、被告人の犯罪に籍口して、国が財政収入の二重取りをするものであるから、憲法所論法条に違反するというのである。しかし、本件没収は、たばこ専売法違反行為の取締りを励行する為に、被告人に対し、附加刑として科せられたものであり、本件追徴は右没収に代るべきものとして被告人からなされたものであつて、たばこ専売法のたばこにつき、日本専売公社を通じ、国庫の取得する財政収入とは、その性質を異にするものであることは明らかである。それ故、右両者を国が取得したからといつて、所論のように、国が財政収入の二重取りをしたものということはできない。されば、所論は前提において採ることを得ず、違憲の趣旨は(註。憲法第二九条、第一〇条、第三一条違反の論旨)前提を欠くものである。
たばこ専売法第七五条にいわゆる没収、追徴と憲法第二九条、第一〇条第三一条。
たばこ専売法75条,憲法10条,憲法29条,憲法31条,刑訴法405条1号
判旨
たばこ専売法違反に伴う没収および追徴は、犯罪取締りのための附加刑であり、専売公社を通じた国庫収入とは性質を異にするため、これらを併せて取得しても財政収入の二重取りには当たらず憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
たばこ専売法違反に基づく没収および追徴が、国の財政収入との関係で「二重取り」となり、憲法に違反するか。
規範
没収は、特定の行政法規違反行為(本件ではたばこ専売法)に対する取締りを励行するための附加刑としての性質を有する。また、追徴は当該没収に代わるべき性質を持つ。これらは、国家が行政上の目的から通常の経済活動や独占事業を通じて取得する公債・税外収入等の財政収入とはその目的・法的性質を異にするため、両者が併存しても二重利得の問題は生じない。
重要事実
被告人は、たばこ専売法違反の罪に問われ、原審において同法に基づき没収および追徴の言渡しを受けた。これに対し被告人側は、専売制度により国が本来得るべき利益に加え、没収・追徴を科すことは、国が同一の事由から財政収入を二重に受け取るものであり、憲法(財産権の保障等)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件における没収は、たばこ専売法違反行為の取締りを実効的なものとするために、刑罰の一種である附加刑として科せられたものである。また、本件追徴もその没収の目的を達するためにこれに代わるものとしてなされた。これらは刑事制裁としての性格を持つ一方、日本専売公社を通じて国庫が取得する収益は、専売制度という経済的枠組みに基づく財政収入である。このように没収・追徴と通常の財政収入は性質を全く異にするため、国がその両者を取得したとしても、不当な二重取りであるとの評価は当たらない。
結論
本件没収および追徴は憲法に違反しない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
行政刑法における没収・追徴が、行政上の利得や租税等の他の財政的負担と併存する場合でも、その制裁的・抑止的性質に着目して二重処罰や不当な財産権侵害を否定する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(あ)1073 / 裁判年月日: 昭和37年3月13日 / 結論: 棄却
所論は、たばこ専売法第七一条第一号、第六二条二項の罰則が白地刑法であると断じ、これを前提にして右罰則の違憲をいうので考察するに、右罰則は公社からくずたばこを買い受けた者に対し、該たばこをその買受の際公社の定めた目的以外の用途に充てることを禁止し、これに違反した場合には刑罰の制裁が科せらるべき旨を規定したものであるが、右…