原判示の様に第一審は古物台帳が改竄されて居る状況を賍物性の知情に関する一つの証拠として居るのであつて、右状況は所論鑑定(改竄された部分の指印が誰のものかという点について)の如何によつて変わるものではないから、鑑定を却下したことは右採証には何等影響のないことで審理不尽の違法は存しない。
古物台帳が改竄されている状況を採証に供する場合に、その状況に関する鑑定が必要か
刑訴法165条,刑訴法318条
判旨
誘導尋問によって得られた供述であっても、直ちに任意性が否定されるわけではなく、供述が任意になされたものと認められる限り証拠能力は認められる。また、証拠物の状況から事実認定が可能であれば、それに関連する鑑定申請を却下しても違法ではない。
問題の所在(論点)
1.誘導尋問によって得られた供述に任意性が認められるか。2.証拠物の改竄状況が明らかである場合に、鑑定請求を却下して当該状況を証拠として採用することは許されるか。
規範
刑事訴訟法における自白や供述の任意性は、取調べや尋問の態様が供述の自由を不当に制圧するものであったか否かにより判断される。誘導尋問が行われたという一事のみをもって直ちに任意性が欠如しているとは断定できず、諸般の事情を総合して供述が任意になされたと認められるか否かを個別具体的に判断すべきである。
重要事実
被告人が犯行に関与したとされる事案において、共犯者または関係者Aの供述が得られたが、弁護人は当該供述が誘導尋問によるものであり任意性を欠くと主張した。また、証拠物件である指印について鑑定を請求したが、第一審は物件が改竄されている状況そのものを証拠として採用し、鑑定請求を却下した。さらに、憲法上の公平な裁判所による裁判を受ける権利の侵害等も併せて主張された事案である。
あてはめ
1.Aの供述について、誘導尋問の事実はあったとしても、そのことが直ちに供述の任意性を奪うものではない。原審の判断通り、本件の供述は任意性を欠くものとはいえず、証拠能力が認められる。2.指印の鑑定について、第一審は物件が改竄されているという現況自体を証拠としており、この状況は鑑定結果のいかんにかかわらず不変である。したがって、鑑定を却下した上で改竄状況を採証した判断に違法はない。
結論
本件上告を棄却する。誘導尋問による供述であっても任意性が認められれば証拠として採用でき、鑑定を要せずとも事実認定が可能な範囲での証拠採用は適法である。
実務上の射程
供述の任意性に関する基本的な枠組みを示す。誘導尋問が直ちに証拠能力を否定するものではない点は、公判段階の尋問だけでなく、取調べの任意性判断においても参考にされる。また、裁判所の証拠決定(却下)の裁量と、証拠物の現状に基づく事実認定の関係を示す実務的先例である。
事件番号: 昭和27(あ)356 / 裁判年月日: 昭和28年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白の任意性が争われる場合であっても、記録上その自白や証拠同意の任意性を欠くと認めるべき証跡が存在しない限り、違憲の主張は認められず、証拠能力を肯定すべきである。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、被告人の自白および証拠とすることの同意(証拠同意)が任意性を欠くものであるとして、憲法違反を理由に…