判旨
被告人が供述調書の任意性を争った場合の調査方法は、裁判所が適当と認める自由な方法によって行うことができ、その調査事実は必ずしも調書に記載することを要しない。
問題の所在(論点)
被告人が供述調書の任意性を争った場合、裁判所はどのような方法でその任意性を調査すべきか。また、その調査の事実は必ず公判調書等に記載されなければならないか。
規範
刑事訴訟法319条1項及び322条1項に関連し、自白調書の任意性の有無に関する調査は、いわゆる「自由な証明」の対象となる。したがって、その調査については裁判所が適当と認める方法によって行うことができ、またその具体的な調査過程を公判調書等に逐一記載しなければならない法的義務まではない。
重要事実
被告人が司法警察員及び検察事務官に対して作成された各供述調書につき、任意性を争った事案である。第一審裁判所は、当該調書の任意性を判断するにあたり、公判期日において被告人に対し調書作成時の状況について直接質問を行うなどの調査を実施したが、弁護人側は、その任意性調査の事実が調書に適切に記載されていないことや、調査の手続的瑕疵を理由に、憲法違反及び訴訟法違反を主張して上告した。
あてはめ
本件において第一審裁判所は、問題となっている供述調書の作成状況について被告人本人に質問を行っている(公判調書200丁)。これは裁判所が任意性判断のために必要かつ適当と判断した調査方法といえる。また、任意性の調査は裁判所の裁量的判断に委ねられる「適当な方法」で行えば足り、その調査プロセスの詳細を記録化することは、証拠能力を認めるための必須の要件ではない。したがって、被告人への質問を通じて心証を得た以上、手続に瑕疵はないと判断される。
結論
任意性調査の方法は裁判所の裁量に属し、適当と認める方法で行えば足りる。また、その調査事実を調書に記載しなくとも違法ではない。
事件番号: 昭和26(あ)1295 / 裁判年月日: 昭和28年10月9日 / 結論: 棄却
一 被告人の供述調書の任意性を被告人が争つたからといつて、必ずしも検察官にその供述の任意性について立証させねばならないものではない。 二 右供述調書の任意性の有無の調査は、裁判所が適当と認める方法によつてこれを行うことができ、かつ供述調書の方式のみでなく内容自体も右調査の資料となし得る。 三 右供述調書の任意性調査の事…
実務上の射程
自白の任意性の調査が「自由な証明」で足りることを示した。実務上、任意性の取調べ順序(他証拠との前後関係)については本件判決が先行証拠の取調べ後に行われたことを是認している点も留意すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)36 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
原判示の様に第一審は古物台帳が改竄されて居る状況を賍物性の知情に関する一つの証拠として居るのであつて、右状況は所論鑑定(改竄された部分の指印が誰のものかという点について)の如何によつて変わるものではないから、鑑定を却下したことは右採証には何等影響のないことで審理不尽の違法は存しない。