一 被告人の供述調書の任意性を被告人が争つたからといつて、必ずしも検察官にその供述の任意性について立証させねばならないものではない。 二 右供述調書の任意性の有無の調査は、裁判所が適当と認める方法によつてこれを行うことができ、かつ供述調書の方式のみでなく内容自体も右調査の資料となし得る。 三 右供述調書の任意性調査の事実は、これを必ず調書に記載しなければならないものではない。
一 被告人の供述調書の任意性立証の要否 二 右供述調書の任意性の調査方法 三 右供述調書の任意性調査と公判調書
刑訴法325条,刑訴法322条,刑訴法48条,刑訴規則44条
判旨
被告人の供述調書の任意性に争いがある場合でも、裁判所が適当な方法で調査した結果、任意性の心証を得たときは、必ずしも検察官の立証を待たずに当該調書を証拠とすることができる。その際の調査資料には、供述調書の記載内容自体も含まれる。
問題の所在(論点)
被告人が供述の任意性を争った場合に、裁判所は検察官による立証を待たず、かつ独自の調査(供述内容の検討等)のみによって任意性の心証を得て、証拠として採用できるか。
規範
供述調書の任意性に争いがある場合、必ずしも検察官に立証を尽くさせなければならないものではない。裁判所が自由な証明による調査を行い、任意性について心証を得たときは、これを証拠とすることが可能である。この調査方法に格別の制限はなく、当該供述調書の署名・捺印や記載内容(供述内容)自体も、任意性判断の資料とすることができる。
重要事実
検察官が被告人の供述調書の証拠調べを請求したところ、被告人及び弁護人は「検事の威嚇に基づくもので任意性がない」として異議を述べた。これに対し、第一審裁判所は特段の証拠調べ(任意性の立証手続)を別途施行した形跡がないまま、当該調書に証拠能力を認め、有罪認定の証拠として採用した。弁護人は、検察官の立証を待たずに証拠としたことは憲法38条、刑訴法319条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は供述調書の内容を検討し、特段任意性を疑わしめる点がないと判断している。また、記録や他の証拠に現れた事実関係に照らしても、任意性に疑念を挟む余地はない。裁判所が「適当な方法」によって調査した結果、任意性の心証を得た以上、改めて検察官に立証を命じなかったとしても違法とはいえない。調書自体の供述内容も、その供述が自発的になされたか等を判断する重要な資料となり得るため、これを用いた調査は適法である。
結論
被告人が任意性を争った場合でも、裁判所が適当な方法で調査し心証を得れば、検察官の立証がなくとも証拠採用でき、本件の措置は適法である。
実務上の射程
任意性の調査が「自由な証明」で足りることを示す。答案上、任意性に疑義がある際の調査手続において、裁判所が供述内容自体を検討材料にできる点や、職権による調査の裁量を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1569 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書に裁判官による問答が記載されているという一事のみでは、当該供述が誘導に基づく不任意なものとは断定できず、任意性は否定されない。 第1 事案の概要:窃盗幇助の罪に問われた被告人の第一審第一回公判調書において、裁判官による訊問とそれに対する応答が記載されていた。弁護人は、この記載内容から、被告…
事件番号: 昭和24(れ)1152 / 裁判年月日: 昭和25年10月11日 / 結論: 棄却
公判廷外の証人訊問については弁護人立会のもとに行われていることとが記録上明白であるから被告人が立会しなくとも必ずしも所論憲法第三七条第二項に違背するものではない。(昭和二三年れ第一〇五四号同年九月二二日大法廷判決参照)論旨は理由がない。