被告人及び弁護人が前記書面を証拠とすることに同意したことは、すなわちその供述が任意になされたことを認めたのであり従つてその証拠能力を認めた趣旨であるから、一旦同意した後さらにまた任意性を争うのは前後矛盾する行為であつて、後にかかる主張をしても結局採用することができない。
被告人、弁護人が書面を証拠とすることに同意した場合と任意性調査の要否
刑訴法325条,刑訴法326条
判旨
被告人が供述調書を証拠とすることに同意(刑訴法326条)した場合、裁判所は刑訴法325条に基づく任意性の調査を要さず、その同意は任意性を認めたものと解されるため、後から任意性を争うことは許されない。
問題の所在(論点)
刑訴法326条の証拠同意がなされた場合において、裁判所は刑訴法325条に基づく任意性の調査を行う義務を負うか。また、一度同意した後に任意性を争うことが許されるか。
規範
刑法326条に基づく証拠同意がなされた場合、当該書面については刑訴法325条の規定にかかわらず、供述の任意性について裁判所が改めて調査する必要はない。かかる同意は、供述の任意性を認め証拠能力を付与する趣旨を含むものであり、一旦同意がなされた以上、特段の事情がない限り、後に任意性を争うことは禁反言の理に照らし許されない。
重要事実
第一審の公判手続において、検察官が提出した被告人の司法警察員および検察官に対する各供述調書について、被告人および弁護人の双方が証拠とすることに同意し、かつ証拠調べについても異議がない旨を陳述した。しかし、その後に被告人側が当該供述の任意性を争い、証拠能力を否定する主張を行った。
あてはめ
被告人と弁護人が共に書面を証拠とすることに同意し、証拠調べに異議がないと述べた事実は、その供述が任意になされたことを自ら認めたものと評価できる。これは、当該書面の証拠能力を肯定する明確な意思表示である。したがって、かかる同意後に再度任意性を争う主張をすることは、先行する訴訟行為と矛盾する行為であり、裁判所はこれを採用する必要はない。
結論
被告人が証拠同意をした場合には、任意性の調査は不要であり、後日任意性を争うことはできない。本件上告は理由がない。
実務上の射程
証拠同意の法的性質を「証拠能力付与の意思表示」と解する判例であり、実務上、同意後に任意性を争うことを制限する射程を持つ。ただし、同意の前提となる事実に重大な誤認がある場合等の例外については判決文からは不明であるが、答案上は原則として同意の効果を重視する根拠として用いる。
事件番号: 昭和27(あ)4896 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人及び弁護人が証拠とすることに同意した証拠については、憲法37条2項の証人尋問権(対面・反対尋問権)を放棄したものと解され、これに基づく証拠採用は同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は賍物(盗品等)の情を知りながらこれに関与した罪に問われた。第一審において裁判所が採用した証拠について、…