判旨
被告人が第一審において証拠とすることに同意した書面については、刑事訴訟法321条1項または2項の要件を充足するか否かにかかわらず、同法326条に基づき証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
被告人が刑事訴訟法326条に基づき証拠とすることに同意した場合において、当該書面が同法321条各号等の伝聞例外要件を別途充足する必要があるか。
規範
刑事訴訟法326条1項の同意がある場合には、伝聞証拠であっても、裁判所が相当と認めるときは証拠能力が付与される。この同意がある以上、当該書面が同法321条等の他の伝聞例外規定(証拠能力取得の厳格な要件)を充足するか否かを個別に判断する必要はない。
重要事実
被告人が第一審において、特定の書面を証拠とすることに同意した。その後、弁護人は当該書面が刑事訴訟法321条1項または2項の要件を満たさないとして、その証拠能力を争い、控訴・上告の理由とした。
あてはめ
本件では、被告人は第一審という適切な手続段階において、問題となっている証拠を証拠とすることに同意している。このように当事者が証拠とすることに異議がない旨を表明した場合には、法は当事者の処分権を尊重し、326条により簡易に証拠能力を認める制度を採用している。したがって、原審が「被告人が同意したものであるから、321条の書面であるか否かを論じる必要はない」と判断したことに誤りはない。
結論
被告人が証拠とすることに同意した以上、刑事訴訟法326条により証拠能力が認められ、他の伝聞例外要件を充足する必要はない。
実務上の射程
同意書面の証拠能力(326条)が他の伝聞例外(321条〜324条)に対して独立した根拠であることを示した。実務上、弁護人が一度同意した証拠を後から伝聞要件の不備で争うことは困難であることを示唆しており、同意の撤回・取消しが認められない限りの帰結として重要である。
事件番号: 昭和27(あ)4255 / 裁判年月日: 昭和28年11月17日 / 結論: 棄却
被告人及び弁護人が前記書面を証拠とすることに同意したことは、すなわちその供述が任意になされたことを認めたのであり従つてその証拠能力を認めた趣旨であるから、一旦同意した後さらにまた任意性を争うのは前後矛盾する行為であつて、後にかかる主張をしても結局採用することができない。