第一審において所論証人尋問の期日を弁護人に通知しなかつた瑕疵があつたとしても、右尋問の調書は後に公判において証拠調が為され右期日に立会つた被告人からも弁護人からも何ら異議の申出のなかつたことは記録上明らかであるから右の疵疵はこれによつて治癒せられたとみとめるべきである。
証人尋問の期日を弁護人に通知しなかつた瑕疵とその治癒
刑訴法157条2項,刑訴法159条1項
判旨
第一審における証人尋問期日の通知欠如という手続上の瑕疵は、その後に公判で当該証拠の証拠調べが実施され、被告人及び弁護人が異議を申し立てなかった場合には、治癒されると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
裁判所が弁護人に証人尋問の期日を通知しなかったという手続上の瑕疵(刑事訴訟法158条等参照)は、その後の公判手続において当事者が異議を述べなかったことによって治癒されるか。
規範
刑事訴訟手続において、証人尋問期日の通知を欠く等の手続上の違法が存在する場合であっても、後の公判期日において当該証拠の適法な証拠調べが行われ、かつ被告人及び弁護人がその内容を了知した上で異議を述べなかったときは、当該手続上の瑕疵は治癒される。
重要事実
第一審において証人尋問が行われた際、裁判所から弁護人に対しその期日の通知がなされなかった。しかし、その後に開かれた公判期日において、当該証人尋問の結果を記載した調書の証拠調べが実施された。その際、証人尋問期日に立ち会っていた被告人、および通知を受けなかった弁護人のいずれからも、当該証拠の採用や手続について何ら異議の申し出はなされなかった。
あてはめ
本件では、第一審において証人尋問の通知を欠いた瑕疵があったとしても、その尋問調書は後の公判において正式な証拠調べの手続を経ている。この際、期日に立ち会っていた被告人はもちろん、通知を受けられなかった弁護人もその場に立ち会い、内容を確認した上で異議を申し立てていない。このような状況下では、当事者の防御権や知る権利が実質的に保障されたものと評価でき、当初の手続的瑕疵を理由に判決を破棄すべき違法があるとはいえない。
結論
本件証人尋問期日の通知欠如の瑕疵は治癒されたと認められ、上告を棄却する。
実務上の射程
手続的権利の侵害があっても、その後の適法な証拠調べと当事者の異議の欠如(黙認)によって瑕疵が治癒されることを認めた事例。訴訟手続の安定性と防御権保障のバランスを考慮する際の指標となる。ただし、あくまで「異議がなかった」事実が重要であり、明示的に異議が出された場合には、依然として重大な違法とされる可能性がある点に注意が必要である。
事件番号: 昭和32(あ)1331 / 裁判年月日: 昭和32年9月10日 / 結論: 棄却
公判期日外の証人尋問の際の尋問事項は、裁判所が職権で証人を尋問する場合には裁判所が両当事者にこれを知らせるべく(刑訴規則一〇九条)又、一方の当事者の申請による証人を尋問する場合には、その申請をした当事者がその相手方にこれを知らせるべきもの(同一〇八条)であるから、本件において、前記各証人の公判期日外における尋問につき各…