刑訴第六五条第三項の被告人に対する通知による召喚手続については、裁判所が各場合につき相当と認めるところに従い、在監人召喚簿、電話その他適宜の方法により前もつて通知をすれば足りる。
刑訴法第六五条第三項の通知による召喚手続
刑訴法65条,刑訴法54条,刑訴規則298条,民訴法168条
判旨
在監者に対する召喚通知は監獄官吏を通じて適宜の方法で行うことができ、仮に召喚状送達から公判期日まで5日の猶予期間がなくても、被告人らが異議なく弁論した場合は手続は適法となる。
問題の所在(論点)
在監者に対する召喚通知の方法、および召喚状送達から公判期日までの猶予期間(5日間)を遵守しなかった場合の公判手続の適否が問題となる。
規範
在監する被告人に対する召喚は、刑事訴訟法63条及び同規則63条に基づき監獄官吏に通知して行うことができるが、その通知方法には特別の方式を要せず、電話や在監人召喚簿等の適宜の方法で足りる。また、被告人召喚から公判期日まで5日の猶予期間(刑事訴訟法275条・同法273条2項参照)を置かなかったとしても、被告人及び弁護人が公判期日に出頭し、異議なく弁論を行った場合には、手続上の瑕疵は治癒され、当該公判手続を違法とすることはできない。
重要事実
被告人は昭和31年12月7日から刑務支所に勾留されていた。第一審裁判所は同年12月19日に期日を指定し、同月27日を第1回公判期日とした。この通知は、在監中の被告人に対し、刑務支所の監獄官吏を通じて口頭で行われた。被告人及び弁護人は第1回公判期日に出頭したが、猶予期間の不足について異議を述べることなく弁論を行った。
あてはめ
本件では、書記官補の印章がある記録等から、監獄官吏に対する適宜の通知がなされ、被告人にも口頭で伝達されたと認められる。仮に、監獄官吏からの通知が遅延し、法定の5日間の猶予期間を確保できていなかったとしても、被告人及びその弁護人は公判期日に現に出頭しており、かつ何ら異議を述べることなく弁論を行っている。このように防御権の行使に実質的な支障が生じておらず、当事者が異議なく手続を進行させた以上、手続的な違法があるとはいえない。
結論
在監者への通知は監獄官吏を通じた適宜の方法で足り、また猶予期間の不足があっても被告人らが異議なく弁論した以上、公判手続は適法である。
実務上の射程
公判期日の召喚猶予期間という手続規定の違反について、被告人側が異議を述べずに弁論を開始した場合には瑕疵が治癒されるという、手続的瑕疵の治癒に関する法理を示す。実務上、準備期間不足を理由とする手続違反を主張するには、期日において即座に異議を述べる必要がある。
事件番号: 昭和24(れ)360 / 裁判年月日: 昭和24年7月7日 / 結論: 棄却
被告人に對する原審第一回公判期日が昭和二三年一二月八日と指定されたにも拘わらず該期日の召喚状が被告人に送達せられたのは同月五日であり、舊刑訴法第三二一條第一項所定の三日の猶豫期間の存しなかつたことは、所論のとおりである。しかし原審公判調書の記載によれば被告人は右期日に出廷し、何等異議を述べず辯論をしていることが窺い得る…