被告人に對する原審第一回公判期日が昭和二三年一二月八日と指定されたにも拘わらず該期日の召喚状が被告人に送達せられたのは同月五日であり、舊刑訴法第三二一條第一項所定の三日の猶豫期間の存しなかつたことは、所論のとおりである。しかし原審公判調書の記載によれば被告人は右期日に出廷し、何等異議を述べず辯論をしていることが窺い得るのであるから、同條第二項より右猶豫期間を存しなかつた瑕疵は治癒されたものと認むべきであり後日上告論旨で手續上の違法として非難され得るものとはいえない。
第一回公判期日とその召喚状の送達との間に猶豫期間を存しない場合の被告人の出頭と公判手續の適否
舊刑訴法321條1項,舊刑訴法321條2項
判旨
公判期日の召喚状送達において法定の猶予期間を欠く瑕疵があっても、被告人が出頭し異議なく弁論した場合は瑕疵が治癒される。この瑕疵の治癒を認めることは、被告人の利益保護と裁判の迅速化の観点から合理的である。
問題の所在(論点)
召喚状の送達から公判期日までの猶予期間が法定期間に満たない場合、その手続上の瑕疵は、被告人の出頭および異議なき弁論によって治癒されるか。
規範
公判期日の猶予期間に関する規定は被告人の防禦権を保護するための利益規定である。したがって、猶予期間を欠く召喚手続に瑕疵があったとしても、被告人が任意に期日に出頭し、何ら異議を述べずに弁論を行った場合には、当該瑕疵は治癒され、事後的に手続上の違法として主張することはできない。
重要事実
被告人に対し、昭和23年12月8日を第1回公判期日とする指定がなされたが、召喚状が送達されたのは同月5日であった。旧刑事訴訟法321条1項(現刑訴法275条参照)が定める3日の猶予期間(初日不算入の原則等に照らし中3日)を満たさないまま公判が実施された。しかし、被告人は当該期日に出廷し、異議を述べることなく弁論を行った。
あてはめ
本件では、召喚状の送達から期日まで中2日しかなく、法定の猶予期間を欠いている。しかし、記録によれば被告人は期日に出頭しており、かつ手続の不備について異議を申し立てずに弁論を遂げている。猶予期間は被告人の準備の便宜のために設けられたものであるが、被告人が自ら不利益を甘受して弁論に応じている以上、改めて期日を変更することは事件の完結を遅延させ、かえって被告人に不利益を招く結果となる。よって、被告人の行為により瑕疵は治癒されたといえる。
結論
公判期日の召喚手続における猶予期間の不遵守は、被告人が異議なく弁論したことで治癒されたため、手続上の違法は存在しない。
実務上の射程
現行刑訴法275条(猶予期間)の解釈においてもそのまま妥当する。実務上、被告人の防禦権を侵害しない限りでの「瑕疵の治癒」を認める根拠として重要であり、被告人が異議を述べた場合は、期日の変更等(刑訴法277条)を検討すべきという裏返しの指針としても機能する。
事件番号: 昭和24新(れ)448 / 裁判年月日: 昭和25年5月25日 / 結論: 棄却
一 所論は第一審における辯護人に對する公判期日通知手續に懈怠ありと主張するものであるから、明らかに刑訴法第四〇五條に定める事由に該當しない。 二 所論は第一判決の量刑不當の主張であるから、明らかに刑訴法第四〇五條に定める事由に該當しない。
事件番号: 昭和23(れ)57 / 裁判年月日: 昭和23年4月23日 / 結論: 棄却
一 第一回の公判期日と被告人に對する召喚状送達との間に三日の猶豫期間がなくても被告人が右期日出頭して異議なく辯論したときはその公判手續は違法ではない。 二 犯罪の動機、被告人の人物、性格は、情状として、刑の量定の上に、重大な影響を及ぼすものであり、裁判所として、量刑に必要な限度において、詳しく取調べをしなければならぬこ…