第一審が被告人及び弁護人に対して公判期日外の証人尋問に立会の機会を与え(両名とも不出頭)、その証人尋問調書の証拠調に当つて異議を述べる機会を与え被告人の審問権を実質的に害しない措置を講じたことは明かであるから、被告人が右証人尋問に立会せしめられなかつたことをもつて刑訴一五九条二項乃至憲法三七条二項に違反するということではできない。(昭和二四年(れ)一八七三号、同二五年三月一五日大法廷判決。判例集四巻三号三七一頁以下参照)。
公判期日外における証人尋問に被告人及び弁護人が立ち会わなかつたことと憲法第三七条第二項
憲法37条2項,刑訴法158条,刑訴法159条,刑訴法309条
判旨
被告人及び弁護人が、公判期日にて告知された証人尋問期日に正当な理由なく出頭しなかった場合、立会いの機会が付与されている以上、その不在下での尋問は憲法37条2項に反しない。
問題の所在(論点)
被告人及び弁護人が出頭していない状態で実施された証人尋問の結果を証拠とすることが、被告人の証人審問権(憲法37条2項、刑訴法159条2項)を侵害し、憲法違反となるか。
規範
憲法37条2項及び刑訴法159条1項・2項が定める証人尋問への立会権・審問権は、被告人及び弁護人に対し、証人尋問に立ち会う「機会」が実質的に保障されていれば足りる。したがって、裁判所が適法に告知を行い、立会いの機会を与えたにもかかわらず、当事者の責めに帰すべき事由により出頭しなかった場合には、その権利を害したものとはいえない。
重要事実
第一審の第三回公判期日において、被告人及び弁護人の双方が出頭している中で、証人A及びBの両名に対する証人尋問期日が告知された。しかし、当該尋問期日に被告人及び弁護人は出頭しなかった。その後、第四回公判において当該証人尋問調書の証拠調べが行われた際、被告人らから尋問の適否に関する異議の申し立てはなく、当該証人を改めて喚問する申請もなされなかった。
あてはめ
本件では、証人尋問期日が被告人及び弁護人の出頭した公判廷において直接告知されており、両者には尋問に立ち会うための十分な機会が与えられていたといえる。それにもかかわらず両名が出頭しなかったことは、自らその機会を放棄したものと解される。また、後の公判期日においても異議申し立てや再度の喚問申請を行っていないことから、手続保障上の瑕疵も治癒されている。したがって、裁判所は被告人の審問権を実質的に害しない措置を講じたと評価できる。
結論
被告人が証人尋問に立ち会えなかったとしても、立会いの機会が与えられていた以上、憲法37条2項及び刑訴法159条2項に違反しない。
実務上の射程
当事者の不出頭により証人審問権の侵害が主張された際、裁判所側がいかに告知を行い「機会」を提供したかを論じる際の根拠となる。実務上は、勾引や不出頭の理由の有無も考慮されるが、本判決は適法な告知があれば実質的保障として足りるという規範を提示している。
事件番号: 昭和27(あ)4267 / 裁判年月日: 昭和28年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の面前での証人尋問に際し、被告人が退廷させられた場合であっても、反対尋問の機会が実質的に保障されている限り、憲法37条2項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件で起訴され、第一審の公判手続において証人尋問が行われた。その際、何らかの理由(詳細は判決文からは不明)により被告人が退廷…