所論は、結論として原判決が証拠とした三名の証人の供述について被告人に審問の機会を与えなかつたこととなるから、憲法三七条二項に違反すると主張するのであるが、その前提として、右三名の証人を取り調べた原審第七回の公判期日の召喚状は、被告人に不送達となつたため、被告人は出廷することができなかつたことを理由とする。しかし記録によれば原審は被告人の所在不明のため、刑訴規則六三条により右公判期日の召喚状を書留郵便に対して送達したものであることが認められるから、被告人の右公判期日不出頭は同人の責に帰すべきものである。(召喚状の送達と右公判期日との間に三日の猶予しかなかつたからといつて何等不当はない。刑訴規則六七条一項参照)のみならず、右公判期日には弁護人が出席して各証人に対し審問を行つているのであるから、被告人に証人に対する審問の機会を与えなかつたものであるということはできない。所論違憲の主張は前提を欠き採用するに足りない。
控訴審における証人尋問期日に被告人が出頭できなかつた場合と憲法三七条二項
憲法37条2項,刑訴法157条,刑訴規則63条,刑訴規則67条1項
判旨
被告人が所在不明のため、刑事訴訟規則上の書留郵便に付する送達により公判期日が通知された場合、不出頭は被告人の責に帰すべきものである。また、弁護人が出席して証人に対する反対尋問を行っている以上、被告人に証人審問の機会を与えなかったことにはならず、憲法37条2項には違反しない。
問題の所在(論点)
被告人が公判期日に欠席した状態で証人尋問が行われた場合において、刑事訴訟規則に基づく適法な召喚状の送達がなされ、かつ弁護人が尋問を行っているとき、被告人の証人審問権(憲法37条2項)を侵害するか。
規範
被告人が自身の責に帰すべき事由により公判期日に欠席した場合、その期日に証人尋問が実施されたとしても、弁護人が出席して審問(反対尋問)を行っている限り、憲法37条2項(証人審問権)の保障に反するものではない。
重要事実
原審において3名の証人が取り調べられた第7回公判期日の召喚状につき、被告人が所在不明であったため、裁判所は刑事訴訟規則63条に基づき書留郵便に付して送達(書留郵便に付した発送時に送達があったものとみなす発送送達)を行った。被告人は同期日に出廷できなかったが、弁護人は出席して証人3名に対する審問を行った。これに対し被告人側は、自身に審問の機会が与えられなかったとして憲法37条2項違反を主張した。
あてはめ
まず、被告人の所在不明を理由として刑事訴訟規則63条により書留郵便に付して召喚状が送達された場合、被告人が現実にこれを受け取れず不出頭となったとしても、それは被告人自身の責に帰すべき事由によるものと評価される。次に、当該公判期日には被告人本人こそ欠席しているものの、弁護人が出席して各証人に対する審問を遂行している。このように、適切な法的代理人による尋問の機会が確保されている以上、実質的に証人に対する審問の機会は保障されており、被告人の権利を奪ったとはいえない。
結論
被告人の不出頭は自らの責に帰すべきものであり、かつ弁護人が反対尋問を行っている以上、憲法37条2項違反の主張は認められない。
実務上の射程
被告人が逃亡や所在不明等によって公判を欠席した場合でも、手続的な告知が適法になされ、かつ弁護人が有効な反対尋問を行っていれば、反対尋問権の保障を欠くものとして憲法違反とはならない。公判欠席時における証拠調べの有効性を判断する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和25(あ)641 / 裁判年月日: 昭和27年2月6日 / 結論: 棄却
一 控訴裁判所では、必ずしも常に事実の取調に被告人を立ち会わせ、被告人に弁論の機会を与えなければならないものということはない。 二 控訴審で事実の取調の一方法として証人の尋問をし、これを裁判の資料とするような場合には、憲法第三七条第二項の刑事被告人の権利保護のため特に被告人をこれに立ち会わせ、その証人を審問する機会を与…