控訴裁判所は控訴趣意書に包含された事項を調査すれば足り、それ以外に渉つて控訴の理由の有無につき職権調査をしなければならないものではないのである(刑訴第三九二条参照)。
控訴裁判所の職権調査の要否
刑訴法382条,刑訴法393条
判旨
憲法37条2項は、裁判所が必要と認めて喚問した証人に関する規定であり、裁判所が取調べの必要がないと判断した証人まで喚問することを義務付けるものではない。
問題の所在(論点)
裁判所が被告人による証人尋問の申請を「取調べの必要なし」として却下することは、憲法37条2項が保障する証人審問権に違反するか。刑事訴訟法上の証拠採否の裁量と憲法の関係が問題となる。
規範
憲法37条2項の「公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利」は、無制限に証人尋問を認めるものではない。裁判所が証拠調べの結果等に鑑み、取調べの必要性がないと判断した証人についてまで、喚問して被告人に審問の機会を与えることを義務付けるものではないと解する。
重要事実
被告人が詐欺の事実を争い、第一審において証人尋問の申請を行った。第一審裁判所は当初、右証拠申請の採否を保留していたが、他の証拠調べを行った結果、もはや当該証人の取調べの必要はないと判断し、最終的に証拠申請を却下した。被告人側はこの却下決定が憲法37条2項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、第一審裁判所は直ちに却下するのではなく、他の証拠調べを先行させてその内容を検討している。その上で、審理の経過に照らし、申請された証人の取調べが不要であるとの合理的な判断に至り、却下決定を行っている。憲法37条2項が保障するのは、あくまで裁判所が必要と認めた証人に対する尋問の機会であり、裁判所の訴訟指揮権に基づく必要性の判断を否定するものではない。したがって、必要性がないと認められた本件証人の却下は、同条項に違反しない。
結論
裁判所が取調べの必要がないと認めた証人の喚問申請を却下することは、憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
被告人の証人審問権も訴訟経済や必要性による制約を受けることを示した。実務上は、証拠調べの必要性に関する裁判所の広範な裁量を肯定する根拠として機能する。ただし、無条件の棄却を認めるものではなく、あくまで「必要性がない」という判断が前提となるため、答案上は他の証拠との関係で立証趣旨が重複している等の事実関係に留意すべきである。
事件番号: 昭和26(れ)522 / 裁判年月日: 昭和26年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項前段は、裁判所に対し被告人が申請した証人をすべて取り調べる義務を課すものではなく、裁判所が申請を却下しても直ちに違憲とはならない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、刑事裁判の原審において証人尋問の申請を行ったが、裁判所はその申請をすべて却下した。これに対し被告人側は、かかる却…