検察官が証拠調終了後「本件公訴事実はその証明十分と思料するので、相当法条を適用の上、被告人に対し懲役五年を相当とする」との意見を陳述した以上検察官の法律の適用についての意見としては何等欠くるところはないと解すべきである。
検察官が論告において法律の適用につき単に「相当法条を適用の上」と意見を陳述することの適否
刑訴法293条1項
判旨
検察官が論告において公訴事実の証明が十分である旨を述べ、相当法条の適用と具体的な求刑を陳述した場合には、刑事訴訟法293条1項に規定する「法律の適用についての意見」として欠けるところはない。
問題の所在(論点)
検察官が「相当法条を適用の上」と抽象的に述べるにとどまり、具体的な法条の細目を摘示しなかった場合、刑事訴訟法293条1項の「法律の適用についての意見」として不十分ではないか。
規範
刑事訴訟法293条1項が規定する検察官の「法律の適用についての意見」(論告・求刑)として適法であるためには、公訴事実の成否に関する判断を示した上で、適用すべき罰則および科すべき刑罰の種類・量についての見解が示されていれば足りる。
重要事実
被告人の弁護人は、検察官が証拠調べ終了後に行った意見陳述において、「本件公訴事実はその証明十分と思料するので、相当法条を適用の上、被告人に対し懲役五年に処するを相当とする」と述べたにとどまる点につき、刑事訴訟法293条に違反し、憲法14条・31条に反すると主張して上告した。
あてはめ
検察官は、公訴事実の証明が十分であることを前提として、相当な法条を適用すべきこと、および懲役5年という具体的な量刑の意見を陳述している。このように、罪となるべき事実が証明された旨の確信と、それに対する刑罰の種類および量的な範囲が明示されている以上、法律の適用に関する検察官の判断は示されているといえる。したがって、個別の条文番号等の詳細な摘示が欠けていたとしても、同項の要求する意見陳述としての実質を具備していると解される。
結論
検察官の意見陳述に欠缺はなく、刑事訴訟法293条1項に違反しない。
実務上の射程
検察官の論告・求刑における法条提示の程度に関する判例である。実務上、検察官は具体的な適用法条を摘示するのが通常であるが、本判決によれば、公訴事実の証明の成否と求刑が示されていれば、抽象的な法条言及であっても適法とされる。答案上は、論告の適法性が争点となった際の最小限の要求水準を示す基準として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5106 / 裁判年月日: 昭和29年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白の補強証拠は、被告人の自白した犯罪が架空のものではなく現実に行われたものであることを証するものであれば足り、犯人と被告人との結びつきまで証する必要はない。 第1 事案の概要:被告人が自白した犯罪事実につき、第一審判決は被告人の自白のほかに、これを補強するに足りると認められる証拠を総合して有罪事…