判旨
控訴趣意書提出期間内に国選弁護人が選任され、弁論を行う十分な期間が確保されており、かつ弁護人が異議なく弁論を行っている場合には、弁護権の不当な制限には当たらない。
問題の所在(論点)
控訴審において、提出期間内に国選弁護人が選任されたものの、その活動期間が限定的であった場合に、弁護権の行使を不当に制限し憲法に違反する事態といえるか(刑訴法389条、405条関連)。
規範
被告人の弁護権(憲法37条3項)の侵害の有無は、弁護人が控訴趣意書を提出し、有効な守備を行うために必要な「十分な期間」が客観的に確保されていたか、および手続過程において弁護権の行使が実質的に制限されたといえるか否かによって判断すべきである。
重要事実
被告人が控訴した事案において、原裁判所は控訴趣意書の提出期間を定めた。国選弁護人が選任されたのは、その定められた提出期間内であった。選任された弁護人は、期間の短さ等について原審の公判で何ら異議を述べることなく、被告人が自ら作成・提出した控訴趣意書に基づいて弁論を実施した。
あてはめ
本件では、国選弁護人の選任が提出期間内になされており、客観的にみて控訴趣意書を提出するに十分な期間が存したものと認められる。また、弁護人は原審公判において期間の不足等の手続的瑕疵について何ら異議を申し立てておらず、被告人提出の書面に基づいて実効的な弁論を行っている。したがって、実質的な弁護権の侵害があったとは認められない。
結論
弁護権の行使を不当に制限したものとは認められず、憲法違反や違法な手続には当たらない。上告棄却。
実務上の射程
控訴趣意書の提出期間と国選弁護人の選任タイミングに関する限界事例を示す。十分な期間の有無は、選任後の残余期間や弁護人の対応(異議の有無や弁論の実施状況)を総合考慮して決せられる。実務上は、期間延長申請の要否を判断する際の基準となる。
事件番号: 昭和29(あ)3837 / 裁判年月日: 昭和30年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条1項は、国家が国民に対して概括的に健康で文化的な最低限度の生活を営ませる責務を負うことを定めたものであり、個々の国民に対して直接に具体的・現実的な権利を付与するものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件における上告に際し、量刑不当を主張するとともに、弁護人が憲法25条1項(生存権…