判旨
食糧緊急措置令違反の罪において、適用法令の部に同令10条のみを掲げ、食糧管理法2条の「その他の政令」等の引用を欠いたとしても、違法ではない。また、犯罪事実の摘示において、証拠により内容が特定され、かつ米換算による合計数量が示されていれば、構成要件の摘示として欠けるところはない。
問題の所在(論点)
刑事判決の「適用した法令」の記載において、罰則規定の直接の根拠となる委任法等の条文までを引用する必要があるか。また、犯罪事実の摘示において、証拠や換算数量による特定で足りるか。
規範
特別法違反の罪における適用法令の記載は、直接の罰則規定を掲げれば足り、その委任の根拠となる規定等を併せて掲げなくとも適法である。また、犯罪事実の摘示においては、証拠との関係や換算数量の明示により、処罰の対象となる事実が具体的に特定されていれば、構成要件の摘示として十分である。
重要事実
被告人が食糧緊急措置令10条に違反したとされる事案において、第一審判決は、適用法令の部に「食糧緊急措置令10条」のみを掲げ、同令の根拠法である食糧管理法2条末段(その他の政令)については掲示しなかった。また、犯罪事実の摘示に関し、被害届の内容や米換算による合計数量を用いて事実を記載した。これに対し弁護人が、適用法令の不備および犯罪事実の摘示の不十分さを理由に、判例違反および職権破棄事由(刑訴法411条)を主張して上告した。
あてはめ
適用法令の記載について、原判決が維持した第一審判決は、直接の罰則である食糧緊急措置令10条を明示しており、これに関連する食糧管理法の規定を欠いたとしても、過去の最高裁判例に照らせば法令適用の不備はない。事実摘示についても、証拠として掲げられた詐欺被害届の内容によって具体的な被害事実が明らかであり、かつ米換算による合計数量が明示されていることから、処罰対象となる犯罪事実は明確に特定されているといえる。
結論
本件判決に法令適用の誤りや事実摘示の不備はなく、刑訴法411条等の破棄事由は認められない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
判決書の記載事項に関する判例であり、特に「適用した法令」の摘示範囲について、直接の罰則規定を掲示すれば足りるという実務上の取り扱いを確認するものである。答案上は、罪状認否や公訴事実の特定(刑訴法256条3項)に関する議論において、事実がどの程度具体的に特定されるべきかという視点で引用し得る。
事件番号: 昭和26(れ)1505 / 裁判年月日: 昭和26年11月8日 / 結論: 棄却
所論食糧緊急措置令第一〇条本文は、刑法に正条のない場合の補充規定であることは当法廷昭和二三年(れ)三二九号同年七月一五日の判決の趣旨とするところである。