原判決が、主要食糧の配給に関して不実の申告をしてその配給を受けたという食糧緊急措置令第一〇条該当の罪に関する有罪判決の適用法律としては、食糧管理法施行令第一条のごとき主要食糧の何であるかを定めた法規のようなものは包含されないと判示して、食糧管理法施行令第一条の適用をしなかつた第一審判決を維持したことは法令違反のそしりを免れないが、右違法は未だもつて刑訴四一一条を適用すべき場合ではない。
刑訴四一一条にあたらない一事例 ―適条の遺脱―
刑訴法411条,食糧緊急措置令10条,食糧管理法2条(昭和22・12・30法247号),食糧管理法2条(昭和24・6・25法218号),食糧管理法施行令1条(昭和22・12・30政令330号),食糧管理法施行令1条(昭和24・6・25政令226号)
判旨
食糧緊急措置令違反の罪の判決において、主要食糧の定義を定める食糧管理法施行令等の法規は、有罪判決の適用法律として掲げるべき法令に含まれる。
問題の所在(論点)
食糧緊急措置令違反の罪に関する有罪判決において、主要食糧の定義を定めた食糧管理法施行令1条のような補助的法規を、適用法律として判決書に掲げる必要があるか。
規範
有罪判決の適用法律(刑法・特別刑法等)の解釈において、当該罪の構成要件を補充し、またはその対象を具体的に定義する関係法令(委任命令等)は、判決書に記載すべき適用法律の一部を構成する。
重要事実
被告人は、主要食糧の配給に関して不実の申告をして配給を受けたとして、食糧緊急措置令10条違反の罪に問われた。第一審判決は、主要食糧の具体的内容を定める食糧管理法施行令1条を適用法律として掲げず、原審もこれを維持した。
事件番号: 昭和28(あ)3516 / 裁判年月日: 昭和30年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧緊急措置令違反の罪において、適用法令の部に同令10条のみを掲げ、食糧管理法2条の「その他の政令」等の引用を欠いたとしても、違法ではない。また、犯罪事実の摘示において、証拠により内容が特定され、かつ米換算による合計数量が示されていれば、構成要件の摘示として欠けるところはない。 第1 事案の概要:…
あてはめ
食糧緊急措置令10条の罪が成立するためには、対象が「主要食糧」であることが不可欠である。主要食糧が何であるかを定める食糧管理法施行令1条は、当該処罰規定の適用範囲を画定する法規であるから、適用法律に包含されるべきである。したがって、これを選択しなかった第一審および原審の判断には法令違反の瑕疵が認められる。
結論
主要食糧の定義を定める法規は適用法律に含まれるべきであり、これを掲げないことは法令違反であるが、本件では直ちに破棄すべき重大な違法(刑訴法411条)とはいえないため、上告を棄却する。
実務上の射程
罪刑法定主義の観点から、白地刑罰法規や補充規定がある場合、判決の理由中で根拠となる具体的法令を網羅すべき実務上の指針を示す。答案上は、罪数や適用法令の摘示において、定義規定を漏らさないよう注意する根拠となる。
事件番号: 昭和26(あ)4176 / 裁判年月日: 昭和27年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人のために不利益な主張、すなわち原審の適用した罰則よりも重い罪名を適用すべきとの主張は、上告適法の理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人らは、主食の不正受配を行った事実により、食糧緊急措置令10条違反として処断された。これに対し弁護人は、当該事実は食糧緊急措置令よりも法定刑が重い刑法24…
事件番号: 昭和27(あ)3429 / 裁判年月日: 昭和29年2月23日 / 結論: 棄却
食糧緊急措置令の収用と憲法三五条の押収とは全く無関係のものであるこという迄もない。論旨第一点の如きは全く違憲に名を藉るものと見ざるを得ない。