判旨
被告人のために不利益な主張、すなわち原審の適用した罰則よりも重い罪名を適用すべきとの主張は、上告適法の理由とはならない。
問題の所在(論点)
被告人の弁護人が、原判決が適用した罰則よりも重い罪名(詐欺罪)を適用すべきであると主張することが、適法な上告理由となるか。
規範
上告審において、被告人側の弁護人が、原審が認定・適用した罪名よりも刑法上の重い罪名を適用すべきであると主張することは、被告人の不利益を主張するものであり、上告適法の理由(刑事訴訟法405条等)には当たらない。
重要事実
被告人らは、主食の不正受配を行った事実により、食糧緊急措置令10条違反として処断された。これに対し弁護人は、当該事実は食糧緊急措置令よりも法定刑が重い刑法246条1項の詐欺罪として問擬されるべきであると主張して上告した。
あてはめ
弁護人の主張は、原審が適用した食糧緊急措置令10条よりも重い法定刑を定めている詐欺罪をもって問擬すべしというものである。これは被告人のために不利益を主張するものであり、判例違反等の適法な上告理由を構成しない。また、原審が認定した事実は単なる不正受配であり、詐欺罪の成立を前提とする所論の判例は本件に適切ではない。
結論
被告人の不利益を主張するものであるため、上告適法の理由とはならず、上告棄却を免れない。
実務上の射程
本判決は、不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)の趣旨を背景に、被告人側から被告人に不利な法適用を求める主張の適格性を否定したものである。答案上では、被告人側の上告理由の限界を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和23(れ)614 / 裁判年月日: 昭和23年10月12日 / 結論: 棄却
被告人は、第一審判決で罰金一萬五千圓の刑を言渡されたのに、第二審ではそれよりも重く懲役四ケ月の判決を受けたことを意外とし、人權擁護の明文が新憲法にあるならばかようなことのあるべき筈がないと思う、と述べているが、これは第二審に於て檢察官の附帶控訴があつたために、被告人の控訴した事件に付ては原判決の刑より重き刑を言渡すこと…