被告人は、第一審判決で罰金一萬五千圓の刑を言渡されたのに、第二審ではそれよりも重く懲役四ケ月の判決を受けたことを意外とし、人權擁護の明文が新憲法にあるならばかようなことのあるべき筈がないと思う、と述べているが、これは第二審に於て檢察官の附帶控訴があつたために、被告人の控訴した事件に付ては原判決の刑より重き刑を言渡すことを得ないという原則が適用されなかつたからであつて、原判決には何等の違法も存しない。
附帶控訴と刑の不利益變更
刑訴法403條,刑訴法399條
判旨
検察官による附帯控訴がなされた場合には、被告人の控訴した事件であっても第一審より重い刑を言い渡すことが可能であり、不利益変更禁止の原則は適用されない。
問題の所在(論点)
被告人のみが控訴したわけではなく、検察官からも控訴(附帯控訴)がなされた場合に、第一審の刑よりも重い刑を科すことが不利益変更禁止の原則(刑事訴訟法402条参照)に反し違憲・違法となるか。
規範
被告人が控訴した事件において、検察官の附帯控訴(現行法上の検察官控訴に相当)がなされた場合には、被告人の不利益に裁判を変更することができないとする不利益変更禁止の原則は適用されない。
重要事実
被告人は第一審において罰金1万5千円の判決を受けた。被告人はこれに対し控訴したが、第二審において検察官からも附帯控訴がなされた。その結果、第二審裁判所は第一審の判決よりも重い懲役4か月の判決を言い渡した。被告人は、新憲法下の人権擁護の観点から、第一審より重い刑が科されるのは不当であるとして上告した。
あてはめ
本件では、被告人の控訴に加え、検察官からの附帯控訴が適法になされている。不利益変更禁止の原則は、被告人のみの控訴により上級審の判断を求める際、被告人が不利益を受けるおそれから控訴を躊躇させないための制度的保障である。しかし、検察官もあわせて刑の軽重を争っている場合には、裁判所は第一審の刑に拘束されることなく、適正な量刑を判断すべき立場にある。したがって、検察官の控訴がある以上、第一審より重い刑を言い渡すことに何ら違法はないといえる。
結論
検察官の附帯控訴がある場合には、不利益変更禁止の原則は適用されないため、第一審より重い刑を言い渡すことは適法である。
実務上の射程
不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)の適用範囲を画する重要判例。被告人のみの控訴か、検察官の控訴も伴うかという形式的事実により、上訴審での量刑判断の枠組みが決定されることを示す。答案では、検察官控訴の有無を確認した上で、402条の適用の可否を論じる際の論拠として用いる。
事件番号: 昭和25(あ)151 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審は第一審判決の当否を事後的に審査する事後審としての性格を有しており、その審理の範囲や限度は原審の裁量に属する。上告理由は刑事訴訟法405条に限定され、単なる審理の範囲への不服は適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決に対し控訴したが、原審(控訴審)において、事実審で…
事件番号: 昭和24(れ)3036 / 裁判年月日: 昭和25年4月25日 / 結論: 破棄自判
第一審は被告人に對し懲役四ケ月及罰金二萬圓、右罰金を完納することができないときは百日間勞役場留置の判決を宣告し、第二審は懲役四ケ月及罰金二萬圓、右罰金を完納することができないときは百圓を一日に換算した期間勞役場留置の判決を宣告したのであつて、この原判決主文の換刑處分は第一審判決の留置期間より長いのである。元來勞役場留置…